【コラム】人材育成のカギ: スキルマップ の作り方と効果的な研修の活用法|ビジネスを成功に導く人材育成

スキルマップ の作り方と効果的な研修の活用法

スキルマップ

従業員をどのように正しい道筋に沿って成長させたらよいか…そのように考えた時に、教育の地図があったら目的地に早く的確にたどり着けると思いませんか?その地図を スキルマップ といいます。 スキルマップ とは個人やチームのスキルを視覚的に整理し、各メンバーの能力や知識のレベルが把握できるツールです。
具体的には、以下の表になります。 スキルマップ は、縦軸にスキルの種類、横軸にスキルレベルを配置し、各セルに従業員のスキルレベルをマークする形が一般的です。

 能力ユニット能力細目従業員①従業員②従業員③従業員④
PCの基本操作基本的なPC用語2334
ネットワークセキュリティの基本理解3333
ワープロソフトを使った文書の作成法3323
表計算ソフトの使用法3323
プレゼンテーションソフトなど基本ソフトの活用法2324
情報検索の知識3333

スキルマップ の導入により各従業員が目標を設定でき、成長すべき領域が明確になります。従業員はスキルレベルを視覚的に確認できるため、どのスキルが強みで、どのスキルが不足しているかが一目でわかります。さらに会社の戦略と、個人や組織のスキル戦略を紐づけるためにも、どのようなスキルを身につけるべきかを会社主導でマップを描くことも重要になります。

さらにモチベーション維持や離職防止にもなり、個人の成長が組織の成長、企業の成長に繋がります。実は、Z世代は成長意欲が高い側面があります。例えば、インターネットやデジタル技術を使いこなし、オンライン学習や自己学習の機会を積極的に利用しています。また、キャリア形成に対して高い関心を持ち、学生時代からインターンシップやボランティア活動などを通じて実践的な経験を積んでいる人もいます。
従業員が自身の成長を楽しみながら働ける職場を作る、その方法として スキルマップ を作成してみてはいかがでしょうか。

スキルマップ の目的を明確にしましょう。何のために スキルマップ を作成するのか、例えば、以下のような目的が考えられます。

従業員の現状スキルと目標スキルの差を把握: 現在のスキルレベルと、業務に必要なスキルレベルを比較し、ギャップを特定します。
従業員のキャリアパスを明確にし、成長を支援: スキルマップ を使って従業員のキャリア開発を支援し、成長機会を提供します。
効果的なトレーニングプログラムの計画と実施: スキルマップ を使用して、従業員のスキルギャップを基にトレーニングニーズを特定し、適切なトレーニングを提供します。
求めるスキルセットを明確にし、適切な人材を採用: スキルマップ を使用して、必要なスキルセットを具体的に示し、採用活動を効果的に進めます。

スキルマップ の作成における目的を明確にすることで、その後の活動がスムーズに進み、組織全体のスキル向上や人材育成に役立てることができます。具体的な目的を設定し、それに基づいて スキルマップ の運用を進めることが成功への近道です。

スキルマップ

会社や部門ごとに必要なスキルのリストを作成します。今回はカッツモデルをご紹介します。カッツモデルはマネジメントに必要なスキルを3つのカテゴリに分類するフレームワークで、アメリカの組織心理学者ロバート・カッツ(Robert L. Katz)によって1955年に提唱されました。

このモデルは、マネージャーが効果的に職務を遂行するために必要なスキルセットを明確にし、これらのスキルがマネジメントの異なるレベルでどのように重要になるかを示しています。

テクニカルスキルとは特定の専門分野で必要な知識や能力、技術、実務的なスキルのことです。テクニカルスキルは業界や職種によって異なります(例:プログラミング、データ分析、語学スキルなど)

ヒューマンスキルとは主に人間関係やコミュニケーション能力、協調性など職場で良好な人間関係を築き、効果的・効率的に働くために必要なスキルです。(例:コミュニケーション能力、チームワーク、リーダーシップなど)

コンセプチュアルスキルとは抽象的な概念やアイデアを理解し、統合し、複雑な問題を解決する能力のことです。このスキルは高いレベルの思考力や洞察力を要し、特に企業の戦略的な意思決定やリーダーシップにおいて非常に重要な役割を担っています。(例:論理的思考、プロジェクト管理、リーダーシップなど)

 スキルのリストアップする際、ポジションによって適した評価項目を定めなければいけません。カッツモデルはそれぞれの階層において求められるスキルが異なることが説明されており、各階層に求める評価項目を設定する際に活用することができます。例えば、ミドルマネジメント・管理者層にあたる営業職に対する評価項目を決める際には「深い製品知識、効果的な販売技術、データ分析力、そして市場理解。これらのスキルに加えて、対人関係スキルや問題解決能力、時間管理能力も重視した評価項目を設定しよう」というような判断ができるのです。

各スキルについて評価基準を設定します。評価基準は数値やレベルで表すことが一般的です。例えば、以下のようなレベル分けが考えられます。
1.基礎レベル: 日常的な業務で基本的なスキルを使用できる。
2.中級レベル: 独立して業務を遂行でき、スキルを応用する能力がある。
3.上級レベル: 複雑な業務を効率的にこなし、他の従業員を指導できる。
4.エキスパート: 専門的な知識を持ち、組織内外で認められるリーダー的存在。

こちらを元に、自社の特定のニーズや環境に合わせてカスタマイズすることが重要です。以下の要素を考慮して、評価基準を調整します。
・業界特有のスキル: 特定の業界や職種に特有のスキルについて、より詳細な評価基準を設ける。
・会社の文化と価値観: 自社の文化や価値観に合ったスキルや行動特性を評価基準に組み込む。
・具体的な業務要件: 各職務に求められる具体的な業務要件や期待される成果に基づいて評価基準を設定する。

ステップ3のスキルの評価基準設定は、一般的なフレームワークをベースにしつつ、自社のニーズや従業員の特性に合わせてカスタマイズすることが重要です。これにより、評価基準がより実用的で効果的になり、従業員のスキル向上と組織の成長を支援することができます。

ステップ1~3まで終わったらステップ4のデータ収集です。こちらはステップ3の評価基準設定で作成したものを使用して従業員のスキルデータを収集します。これには、自己評価、上司や同僚からの評価、実績データなどを使用します。アンケートやインタビューを行うことも効果的です。

データ収集の具体的な手順

1.評価基準の共有
従業員とその評価者(上司や同僚)に評価基準を共有します。評価基準が明確であることが重要です。

2.自己評価
従業員に自己評価を依頼します。各スキルについて、自分がどのレベルにいるかを自己評価してもらいます。

3.上司や同僚からの評価
上司や同僚にも従業員のスキルを評価してもらいます。これにより、客観的な評価が得られます。

4.実績データの収集
実績データ(例:プロジェクトの成果、過去のパフォーマンス評価)を収集します。これにより、評価がより正確になります。

5.アンケートやインタビューの実施
必要に応じて、データ収集の対象者である従業員にアンケートやインタビューを実施して、スキルレベルについての現場レベルの情報を収集することも有効です。

収集したデータをもとに、スキルマップを作成します。 スキルマップ はスプレッドシートや専用のソフトウェアを使用して作成することができます。各従業員のスキルレベルを視覚的に表示するため、カラーコードやグラフを利用するとわかりやすくなります。

実際に スキルマップ を導入している企業の代表的な企業としてはトヨタ自動車が挙げられます。
トヨタ自動車の生産体制は、トヨタ生産方式とも呼ばれ多くの製造業のお手本となっています。その生産方式を支えているのが”多能工”の存在です。多能工とは、製造ラインの作業員が複数の作業スキルを持ち、様々な作業領域で働くことができるというものです。トヨタ自動車の多能工では、作業員がどのような作業領域(例: 組み立て、検査、修理など)のスキルを持っているのかをマッピングし、それぞれのスキルをレベルごとに表示します。これにより、どの従業員がどのレベルまでスキルを習得しているのかを一目でわかるようにしておきます。そして、実際に生産ラインの変動や突発的な事象が発生した場合、 スキルマップ をもとに迅速に人員を再配置します。このように、 スキルマップ を活用することによって、必要な時に必要な人材を必要なだけ供給していける効率的な配置を行うことが可能となります。

スキルマップ の作成で参考になるのが厚生労働省が無料で提供している「職業能力評価シート」です。こちらのテンプレートを自社の業界・職種に合ったフォーマットへカスタマイズして活用すると良いでしょう。厚生労働省のサイトでは、 スキルマップ という名称ではなく、「職業能力評価シート」と表記されています。
当社でも スキルマップ 作成の支援が可能です。お悩みの際は、ぜひご相談ください。
(参考)厚生労働省 キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル

作成した スキルマップ を分析し、スキルギャップを特定します。特定されたギャップに対して、トレーニングプログラムや採用計画を立てます。また、キャリア開発の一環として、個々の従業員にフィードバックを提供し、成長を促すことが重要です。

スキルマップ は定期的に更新する必要があります。従業員のスキルが向上したり、新しいスキルが必要になったりするため、定期的な見直しと更新を行います。

スキルマップ を作成するとき、各ステップを効果的に進めるためには、適切な役割分担が重要です。以下に、各ステップを担うべき社内の担当者を具体的に示します。人事だけで作成を進めるのではなく、現場の管理者や現職者なども巻き込みながら行うことが重要です。また、設計のノウハウを有した外部の専門家に力を借りるというのも有効な手段となります。

  ステップ経営陣人事部門人事部門のリーダー各部門のマネージャー人事部門の専門家トレーニング担当者IT部門
1 目的の明確化     
2 スキルのリストアップ    
3 評価基準設定   
4 データ収集    
5 作成 〇    
6 分析と活用 〇  
7 更新  

スキルマップ は、従業員のスキルと能力を視覚的に示すツールであり、組織のトレーニングや開発プログラムを効果的に計画するために役立ちます。 スキルマップ の作成と活用は、組織全体のスキルレベルを把握し、効率的に成長を促進するための重要なステップです。従業員が、自身の成長を楽しみながら働ける組織を目指していきましょう。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容との関連でいえば、スキルマップ作成ステップ3、6と7の役割を担うトレーニングの支援を当社が実施いたします。ステップ3のスキルの評価基準設定では評価基準が研修プログラムに適用されるよう調整します。そしてステップ6分析と活用で必要なスキルに対する研修計画を支援します。研修実施およびフォローアップについては、適切な講師を派遣することが可能です。さらにステップ7の更新の時は スキルマップ の結果に基づいて、研修ニーズを特定したり、必要なスキルを育成するための研修プログラムを開発し、提供します。企業個別の課題をお聞きし、効果的な研修をご提案させていただきます。お気軽にお問合せください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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