【コラム】企業 ガバナンス を機能させる唯一の方法——“リアルな危機感”を浸透させる教育とは?

企業 ガバナンス

ガバナンス

「従業員にルールを教えているのに、現場では守られないのはどうしてか?」
この疑問を持つ人材育成担当者は多いはずです。その答えはシンプルです。
「知っている」と「できる」は違うからです。ルールを学ぶだけでは、人は行動を変えません。どれだけ優れた研修でも、受け身のままでは「 ガバナンス を守る文化」は生まれません。
では、どうすれば ガバナンス は「机上の空論」ではなく「現場で機能する仕組み」になるのか?
その鍵を握るのが、人材育成担当者の役割です。
本稿では、
・ ガバナンス が機能しない本当の理由
・効果的なガバナンス研修のポイント
・研修会社との協働で実現できること

この3つの視点から、人材育成担当者が ガバナンス 浸透のために果たせる役割を整理し、研修を通じて現場にどう働きかけるかを考えます。 ガバナンス は、一部の部署や管理職だけで成り立つものではなく、全社的な取り組みが必要なテーマです。そのため、人材育成担当者としては、「何を伝え、どんな研修を実施すれば現場に響くのか?」を考え、研修会社と協力しながら、効果的な仕組みを作ることが重要になります。
私たち研修会社は、そのプロセスを全力でサポートします。
ぜひ、一緒に「実践的な ガバナンス 教育のあり方」を考えていきましょう。


企業 ガバナンス (コーポレート・ ガバナンス )とは、企業が健全に成長し続けるための仕組みです。
透明性のある経営、不正防止、リスク管理、コンプライアンス徹底 —— どれも、企業の持続的な発展には不可欠な要素です。しかし、ルールがあっても、現場で実践されなければ意味がありません。
例えば、大企業で不祥事が発生した際、その原因は「社内ルールがなかった」わけではなく、「ルールがあっても、それが実践されなかった」ことが原因であるケースがほとんどです。では、なぜガバナンスは実践されないのか?従業員にとって「自分ごと」になっていないためです。
「ルールだから守れ」と押し付けても、人は動きません。しかし、「この判断を誤ると、自分のキャリアも会社の未来も危うくなる」と気づけば、行動が変わります。だからこそ、「研修の内容」「研修のやり方」が重要なのです。


単なる知識のインプットではなく、「もし自分の会社だったら?」と本気で考えさせる研修が必要です。

ケーススタディを活用する
失敗事例:「なぜこの企業は不祥事を防げなかったのか?」
・成功事例:「どのような仕組みが機能し、危機を回避できたのか?」

実際の業務と結びつける
・「自分の部署で同じことが起きたら、どうなるか?」を考えさせる
・「このルールが機能しないと、自分のキャリアにどう影響するか?」を具体的に示す

ガバナンスが問われる場面は、突発的に訪れます。そのとき、考えている余裕はありません。だからこそ、事前に「体験」させておくことが重要です。

ロールプレイ研修の導入
・「部下からハラスメントの相談を受けたら、どう対応するか?」をシミュレーション
・「社内で軽微なルール違反を目撃したとき、見過ごすべきか?」という判断トレーニング

知識を得るだけでは意味がありません。「その場で適切な判断ができるか?」を鍛えることが、人材育成担当者のミッションです。

ガバナンス 研修を効果的なものにするためには、「とりあえず研修を実施する」ではなく、「自社にとって本当に必要な研修は何か?」を明確にすることが重要です。
そのためには、次の3つのステップで「必要な研修内容」を特定します。

  • ステップ1:現場の課題を可視化する
    まずは、「自社の ガバナンス に関する課題」を具体的に把握することから始めます。

現場の声を集める
・従業員や管理職に、「 ガバナンス 上の課題」をヒアリングする
・「 ガバナンス 違反が起こる可能性のある場面」を洗い出す

過去の事例を振り返る
・過去に起こった ガバナンス 違反やコンプライアンス違反のケースを分析
・「なぜ違反が起こったのか?」を深掘りし、組織の課題を特定する

組織のリスクポイントをチェックする
・「どの部署で、どんな問題が起こりやすいか?」を整理する。例えば、「営業部では接待のルールが曖昧」「開発部では情報管理の意識が低い」など
このステップでは、「何が問題なのか?」を明確にすることが目的です。

  • ステップ2:研修の目的を定める
    課題を特定したら、「この研修で何を実現したいのか?」を明確にします。例えば、以下のような視点で整理すると、研修の方向性がクリアになります。

従業員にどんな行動をとってほしいのか?
例:「 ガバナンス 違反を見かけたときに、見過ごさずに行動できるようになってほしい」
例:「リーダーが倫理的な意思決定を適切にできるようになってほしい」

具体的にどんなスキルや知識が必要か?
例:「部下がハラスメントの相談をしたときに、適切に対応するスキル」
例:「不正リスクを察知し、未然に防ぐスキル」

研修の効果をどう測定するか?
例:受講者の行動変容をチェックするための評価指標を考える。
(「研修後に、コンプライアンス違反の内部通報件数が増える」など)

このステップでは、「研修がゴールではなく、現場の行動変容がゴールであること」を明確にすることがポイントです。

  • ステップ3:研修の種類と手法を選ぶ
    目的が明確になったら、それを実現するために「どんな研修が最適か?」を選びます。

研修の種類を決める
・新入社員研修 → 「ガバナンスの基礎」を学ぶ
・管理職研修 → 「意思決定とガバナンスの関係」を深掘りする
・現場向け研修 → 「実際の業務で起こりうるケースをシミュレーション」する

効果的な研修手法を選ぶ
・ケーススタディ研修 → 実例を通じて、リスクを実感させる
・ロールプレイ研修 → 現場での対応を疑似体験し、行動できる状態にする
・シナリオ演習 → 「この場面で、あなたならどうする?」を考えさせる

このステップでは、「目的に合った研修手法を選び、受講者が受け身にならないように設計する」ことが重要です。

研修の方向性が見えたら、研修会社と連携しながら、さらに研修内容をブラッシュアップしていきます。研修会社の役割は「研修を提供すること」ではなく、「組織の ガバナンス を強化するためのパートナーになること」です。

研修会社に相談すべきポイント
・自社の課題に合わせてカスタマイズできるか?
・受講者の主体性を引き出すプログラムになっているか?
・研修後のフォローアップ施策があるか?

研修会社は、単なる「知識を伝える場」ではなく、「現場で実践できる研修を一緒に作るパートナー」としてサポートする存在です。
人材育成担当者は、「必要な研修を明確にし、研修会社と協働しながら、組織に根付く研修を設計する」ことが求められます。

ガバナンス 研修を成功させるためには、次の4つのステップ
ステップ1:現場の課題を可視化する
ステップ2:研修の目的を定める
ステップ3:研修の種類と手法を選ぶ
ステップ4:研修会社と協働し、研修をブラッシュアップする

研修は「やること」が目的ではなく、「従業員の行動を変えること」がゴールです。
そのために、適切な研修を設計し、研修会社と連携しながらブラッシュアップしていくことが重要になります。

ガバナンス を強化し、企業の持続的な成長を支えるためには、他社の成功事例と失敗事例の両方から学ぶことが欠かせません。成功した企業は、どのような施策を講じ、組織に ガバナンス を根付かせたのか。逆に、 ガバナンス が機能せず、不祥事や経営の混乱を招いた企業は、どのような課題を抱えていたのか。
ここでは、 ガバナンス 教育に成功した企業の実践例と、 ガバナンス の欠如がもたらした失敗例を紹介します。

(1)横河電機株式会社
横河電機は、指名諮問委員会を設置し、次期社長や役員の選考と育成を目的とした経営者育成・評価プログラムを策定・運用しています。このプログラムでは、求められる資質や人物像を明確にし、複数の候補者を選定、研修や挑戦的な職務経験を通じて育成・評価を行っています。これにより、ガバナンス体制の強化と経営の透明性向上を実現しています。

(2)アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒグループホールディングスは、サステナビリティ戦略を経営の中心に据え、取締役会が経営陣をどのように監督しているかを明確に開示しています。具体的には、取締役会がサステナビリティ戦略をモニタリングするスキルの有無や、報告頻度、報告内容、報酬制度を通じた経営者の評価などを詳細に記載しています。これにより、投資家やステークホルダーに対して透明性の高い情報提供を行い、ガバナンスの実効性を高めています。

(3)武田薬品工業株式会社
武田薬品工業は、サステナビリティに関する考え方及び取組を有価証券報告書に詳細に記載し、非財務情報と財務情報の開示のタイミングを一致させることで、投資家やステークホルダーに対して一貫性のある情報提供を行っています。また、サステナビリティ関連のリスクと機会を識別するためのプロセスを開示し、SASBスタンダードを参照した記載を行うなど、ガバナンス体制の強化に努めています。

(4)清酒製造業におけるガバナンス強化事例
日本政策金融公庫の調査によると、清酒製造業の中小企業では、地域との密接な関係を活かし、地域からの信頼と監視をガバナンスの一環として取り入れています。例えば、地域住民との交流や地元イベントへの参加を通じて、地域社会からのフィードバックを経営に反映させることで、透明性の高い経営を実現しています。これにより、地域からの信頼を得て、持続的な成長を遂げています。

(5)某中小製造業のガバナンス強化事例
ある中小製造業では、経営者が自社のガバナンス体制の脆弱性を認識し、外部の専門家を社外取締役として迎え入れることで、経営の透明性と意思決定の客観性を高めました。さらに、従業員からの意見を積極的に取り入れる仕組みを構築し、内部統制の強化と組織全体の意識改革を推進しました。これにより、取引先や金融機関からの信頼性が向上し、事業の拡大と安定的な成長を実現しました。

【引用・詳細】
経済産業省 「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2024」https://www.meti.go.jp/press/2024/01/20250114003/20250114003.html?utm_source=chatgpt.com
金融庁 記述情報の開示の好事例集
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250203/01.pdf?utm_source=chatgpt.com
同族中小企業のコーポレートガバナンスと事業承継─清酒製造業の事例─
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun2111_04.pdf
コーポレートガバナンスと中小企業―中小企業の生産性向上を促す「攻めのガバナンス」
https://shokosoken.or.jp/shokokinyuu/2017/12/201712_4.pdf?utm_source=chatgpt.com

(1)光学機器メーカーにおける損失隠蔽の事例
巨額の損失を隠蔽するために不適切な会計処理が行われていました。この問題は、内部告発者からの情報提供によって発覚し、経営陣が不正に関与していたことが明らかになりました。
問題点:
・経営陣による意図的な不正:損失を長期間にわたって隠蔽し、財務報告を操作していた。
・内部統制の機能不全:不正を防ぐための監視体制が不十分であり、長期間発覚しなかった。
・内部告発まで問題が表面化しなかった: ガバナンス の仕組みが適切に機能しておらず、従業員が声を上げづらい環境があった。
教訓:
・内部通報制度の整備と適切な運用が不可欠:従業員が安心して問題を報告できる環境を整えることが重要。
・経営陣の倫理観と説明責任の強化:トップマネジメントが率先して透明性を確保し、ガバナンスの重要性を社内に浸透させる。
・監査体制の強化:外部監査の役割を強化し、企業の財務状況を適切に監視する仕組みを作る。
この事例は、企業 ガバナンス の欠如が深刻な問題を引き起こし、企業の信頼を大きく損なうことを示しています。適切な ガバナンス の仕組みを構築し、継続的に見直すことが不可欠です。

(2)電機メーカーにおける不正会計の事例
数百億円に及ぶ利益の水増しが行われていたことが明らかになりました。経営陣は利益目標の達成を最優先し、不適切な会計処理を行っていました。しかし、外部監査や社内の報告体制が十分に機能しておらず、不正が長期間発覚しませんでした。
問題点:
・過度な利益目標の設定:現実的ではない業績目標が設定され、経営陣や現場に強いプレッシャーがかかっていた。
・監査体制の不備:外部監査人や取締役会によるチェック機能が十分に機能せず、不正を早期に発見できなかった。
教訓:
・現実的な目標設定:経営陣は、達成可能な目標を設定し、過度なプレッシャーが組織全体に悪影響を与えないよう配慮する必要がある。
・監査体制の強化:外部監査や内部監査の役割を強化し、企業の財務状況を客観的にチェックできる仕組みを構築することが重要。
この事例は、経営陣の判断が企業全体に大きな影響を与えること、そして透明性のある監査体制が不正の抑止に不可欠であることを示しています。適切な ガバナンス のもとで、健全な経営環境を維持することが求められます。

企業ガバナンスは、単なるルールの遵守ではなく、企業の持続的な成長を支え、組織の信頼を築くための基盤です。しかし、その仕組みを整えるだけでは、実際の業務の中で機能するとは限りません。
本記事を通じて見てきたように、 ガバナンス を組織に根付かせるためには、「学びを行動へと変える仕組み」をつくることが不可欠です。そのために、人材育成担当者は重要な役割を担います。
ガバナンスは、「やらされるもの」ではなく、「企業をより強くするための戦略」です。
その意識を組織全体で共有し、実践できるようにすることが、これからの企業の競争力を高める鍵となります。
人材育成の取り組みが、組織の未来を大きく変えていきます。
適切な教育と仕組みを整えることで、 ガバナンス は企業文化として根付き、より健全で強い組織へと成長していくことでしょう。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では、特に「ワークショップ中心」のアプローチが、企業ガバナンスの教育において重要な役割を果たします。
ガバナンス教育において最も大切なのは、従業員が単にルールを学ぶのではなく、「自ら考え、適切に行動できる力を身につけること」 です。例えば、コンプライアンス研修で「不正行為は禁止」と伝えても、実際に不正の兆候を目にしたときに適切な行動を取れなければ、ガバナンスは機能しません。そのため、研修では「ワークショップ中心」の手法を取り入れ、参加者が主体的に考え、実践的な学びを得られる環境を整えています。具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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