研修後のフォロー

「研修を受けて終わり」ではなく、「学んだことを職場で活かし、行動を変えること」が本当のゴールです。前編では、研修後のフォローがいかに重要かを、「エビングハウスの忘却曲線」や「トランスファー・オブ・トレーニング理論」の観点から解説しました。
では、研修の効果を“定着”させ、職場での“行動変容”を促すためには、具体的にどのようなフォローが必要なのでしょうか?
後編では、「 フォローアップ研修 」「1on1ミーティング」「フォローの仕組み化」という3つの強力な施策を紹介します。これらの施策を適切に実施することで、研修後の“学びの失速”を防ぎ、現場での“実践力”を引き出すことが可能になります。
「受けただけで終わらせない!」「学びを行動に変える!」
この後編を通じて、研修効果を最大化し、組織の成長につなげる実践的なヒントをお届けします。ぜひ最後までご覧ください。
前編「研修をやりっぱなしにしない!学びを定着させるフォローの科学(前編)」
目次
1.研修効果を最大化する フォローアップ研修

研修を受けただけで終わらせず、「学びを振り返る機会」を設けることで、研修効果を大きく高めることができます。ここでは、 フォローアップ研修 の重要性と、研修後の実践を促進する仕組みについて解説します。
フォローアップ研修 の設計ポイント
実践結果を持ち寄る仕組みを作る
受講者に「研修で学んだことをどのように業務で活かしたか」を整理してもらい、成功事例だけでなく、うまくいかなかったケースも共有します。課題を明らかにし、解決策を探ることで、より実践的な学びにつなげることが可能です。
振り返りを可視化する
「どのように仕事を任せたか」を記録し、具体的な事例をもとに振り返ります。ディスカッションを通じて、成功要因や改善点を明確にし、実務での応用につなげます。
実践を「次のアクション」につなげる
受講者同士で解決策を議論し、業務で試せる具体策を持ち帰ります。 フォローアップ研修 後も学びを継続できるよう、職場で実践を促す仕組みを構築します。
新しい知識や視点を加える
フォローアップ研修 は、過去の学びを振り返るだけでなく、新しい知識や視点を加えることで、受講者の学習意欲を高めることができます。例えば、リーダー力向上研修では、研修本編で「リーダーとしての適切な仕事の任せ方」を学び、 フォローアップ研修 では「心理的安全性を高めるフィードバックの手法」を新たに追加しました。このように、新しい学びを少し加えることで、「研修後も学びが進化し続ける」 というメッセージを伝えることができます。
事例:A社の「リーダー力向上研修」
課題
A社では、リーダー職を対象に「リーダー力向上研修」を実施しました。この研修では、「適切に仕事を任せるスキル」 を学びましたが、以下のような状況が見られました。
・研修直後は、「部下に仕事を任せ、見守るようにした」という声が多かった
・しかし、半年後には 「うまくいった人」と「うまくいかなかった人」 の差が生まれていた
A社が取り組んだフォロー施策
・研修後6ヶ月後に フォローアップ研修 を実施
受講者が「研修で学んだことをどう実践したか?」を振り返る場を提供
成功事例だけでなく、失敗事例も共有し、解決策を探る
・事後課題を設計し、実践の振り返りを促す
研修後1ヶ月後に、「実際にどのような行動を取ったか?」 をレポートにまとめる
「部下やチームにどんな変化があったか?」を振り返る
成果
・「学びを実践し続ける意識」が向上
・「他の人の話を聞いて改善のヒントが得られた」 という声が増加
・「試行錯誤することで結果が変わると気づいた」 受講者が増えた
研修後の実践を支援する仕掛け(事後課題の活用)
フォローアップ研修 だけでなく、研修直後からの「事後課題の設計」 も重要です。
事後課題を活用することで、「知識を持ち帰るだけで終わらない」仕組みを作ることができます。
事後課題の設計ポイント
・学びを明文化する
研修の最後に 「本日の気づき」 を記録し、振り返りやすくする
・実践を促す
「実際にどんな行動を取ったか?」 を1ヶ月後にレポートとしてまとめる
・行動変容の成果を確認する
「部下やチームにどんな変化があったか?」 を共有し、学びを深める
研修効果を高めるには、「 フォローアップ研修 」と「事後課題」を組み合わせ、「学び → 実践 → 振り返り → 新たな学び」 のサイクルを作ることが重要です。
2. 1on1ミーティング

研修で学んだことを実践に移すためには、上司の関与が欠かせません。 研修後に1on1ミーティングを実施することで、受講者が学びを振り返り、実務での行動変容につなげることができます。
ここでは、1on1を効果的に機能させるための 「心理的安全性の確保」 と 「GROWモデルを活用した進め方」 について解説します。
「心理的安全性」を確保することで行動変容が促進される
1on1ミーティングが効果的に機能するかどうかは、「心理的安全性(Psychological Safety)」が確保されているかに大きく左右されます。
心理的安全性とは?
・「この場で発言しても否定されない」「失敗しても受け入れてもらえる」という安心感がある状態。
・ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱し、チームのパフォーマンスを向上させる重要な要素 として注目されている。
1on1で心理的安全性を高めるポイント
・「それはいい視点ですね」「なるほど、そう考えたんですね」と相手の話を受け入れる。
・「なぜできなかったのか?」ではなく「どうすればもっとよくなるか?」に焦点を当てる。
・ 1on1は「上司の指導」ではなく、「部下が学びを整理し、行動につなげる機会」であることを念頭におく。
心理的安全性が確保されると?
・ 受講者が研修後の実践について「成功・失敗の両方」を率直に話せる。
・ うまくいかなかったことも共有しやすくなり、学びの深まりにつながる。
・ 「やらされている」ではなく、「自ら実践し、成長したい」という主体的な行動が生まれる。
心理的安全性のある1on1を実施することで、研修の学びが単なる知識ではなく、「実務で試し、改善しながら成長するもの」へと変わっていきます。
GROWモデルを活用した効果的な1on1の進め方
1on1ミーティングを効果的に進めるためのフレームワークとして、「GROWモデル」 があります。受講者が「研修での学びを、実務でどう活かすか?」を主体的に考えられたり、上司が指示するのではなく、「どうすればよいか?」を引き出す関わり方ができたり、研修後の行動変容を、「自分で決めた目標」として継続しやすくなるメリットがあります。
GROWモデルとは?
目標(Goal) → 現状(Reality) → 選択肢(Options) → 意志(Will) の4ステップで構成されるコーチング手法です。「一方的な指導」ではなく、受講者が自ら考え、行動することを促すのに適しています。
GROWモデルを活用した1on1の流れ
1. Goal(目標):研修の学びをどう実践したいか?
受講者自身が目標を言語化し、意識を明確にする
2. Reality(現状):今の状況はどうか?
実践状況を振り返り、成功と課題を整理する
3. Options(選択肢):他にどんな方法があるか?
上司が答えを教えるのではなく、受講者自身が解決策を考える場にする
4. Will(意志):次にどんな行動を取るか?
「話して終わり」ではなく、具体的なアクションにつなげる
3.フォロー成功のための「仕組み化」

研修の成果を一時的なものにせず、組織全体に定着させるためには、受講者個人の努力に頼るのではなく、「研修が活きる組織文化」 を築く必要があります。そのためには、上司・人事・経営層を巻き込んだ仕組み化が不可欠です。ここでは、フォロー施策を単発の取り組みで終わらせず、組織全体で学びを共有し、定着させる戦略について解説します。
研修を「組織の共通言語」にする
研修で学んだことを受講者だけの知識にとどめるのではなく、組織全体の共通言語として浸透させることが、実務での定着につながります。そのための施策として、以下の方法が有効です。
・上司に研修テキストを事前に共有し、内容を把握してもらう
→研修後のコミュニケーションが円滑になり、学びの実践をサポートしやすくなる
・全社員が同じ研修を受け、同じテーマで議論できる環境をつくる
→組織内で学びを共通言語化することで、「研修の内容がすぐに忘れられてしまう」「現場に戻ると周囲の理解がなく実践しづらい」といった課題を防ぐことができます。
研修は「やること」が目的ではなく、「従業員の行動を変えること」がゴールです。
そのために、適切な研修を設計し、研修会社と連携しながらブラッシュアップしていくことが重要になります。
研修を評価制度と紐づける
研修を「やっただけ」で終わらせないためには、評価制度と連携させる仕組みが重要です。例えば、評価制度に基づいた研修を設計し、研修で学んだ内容が業務で求められる行動と直結する形にします。
具体的な方法として、以下のような施策が考えられます。
・研修の学びを「行動目標」として設定し、上司との1on1で確認する
・研修内容を業務評価の基準に組み込み、実践度を評価する
・研修後の行動変容をデータで可視化し、評価や昇進の要素に取り入れる
このように、研修と評価を結びつけることで、「受講しただけで終わらず、業務の中で実践し続ける」という意識を醸成できます。
研修定着のための関係者の巻き込み戦略
研修を組織文化に根付かせるためには、上司の他に人事、経営層の関与を強化し、それぞれの立場から学びの定着をサポートすることが不可欠です。
人事の役割:「研修のフォロー施策を制度化する」
人事部門は、研修を単発のイベントではなく、業務の中に組み込まれた仕組みとして機能させる役割を担います。
・研修後の実践報告を義務化し、フォローアップを制度化する
・研修と評価制度を連携させ、実践度を評価に反映する
研修を受講者の自主性に委ねるのではなく、人事が制度としてフォロー施策を整備することで、学びの定着率を向上させることができます。
経営層の役割:「研修が組織成長に直結することを示す」
経営層を巻き込むには、研修の意義を「個人の成長」ではなく、「組織の成長や業績向上につながる施策」 として位置づけることが重要です。
・研修の成果を数値化し、組織の成長との関連を示す
・研修が企業戦略の一環であることを明文化し、経営層の理解を得る
例えば、「研修を受けた社員のエンゲージメントスコアが向上した」「研修を実施した部署の業績が前年比で向上した」などのデータを示すことで、研修への投資価値を経営層に納得してもらいやすくなります。
4.まとめ

研修は「受けて終わり」ではなく、「学んだことを職場で活かし、行動に移すこと」が本当のゴールです。しかし、現実には研修の学びが定着せず、効果が薄れてしまうことも少なくありません。
前編・後編を通じて、科学的な視点を交えながら、研修後フォローの重要性と具体的な施策をご紹介しました。特に後編では、「 フォローアップ研修 」「1on1ミーティング」「フォローの仕組み化」という3つの実践的な施策を取り上げ、学びを行動変容につなげる具体的な方法を解説しました。
これらの施策を組み合わせ、研修の学びを職場で活かし続ける仕組みを整えることが大切です。「学んで終わり」ではなく、「実践し、試行錯誤を重ねながら成長していく」——そんな研修文化を組織に根づかせることができれば、研修の効果は大きく向上します。
学びを定着させ、組織全体の成長へとつなげるために、今回の内容をぜひ参考にしてみてください。研修後のフォローを充実させることで、学びが生きた成果に変わるはずです。
前編はこちらからご覧いただけます!「研修をやりっぱなしにしない!学びを定着させるフォローの科学(前編)」
5.企業研修のことならヒューマンエナジーにご相談ください
ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。特に 「ゴールまで支援」 の観点から、研修後のフォローアップ施策まで一貫してサポートします。受講者が学んだことを 実務に活かし、確実に行動変容につなげるために、研修設計の段階からフォロー体制を組み込むことを重視しています。具体的には、研修後の事後課題、フォローアップ研修の設計を含めたフォロー施策を提案し、受講者が学びを継続できる環境を整えます。また、単なる知識の習得で終わらせず、「実践し、定着させる」ことを目的としたアクションプランを策定し、職場で活用できる仕組みを構築します。
さらに、研修効果を最大化するためには、受講者本人だけでなく、上司や人事、経営層の関与も欠かせません。そのため、組織全体で研修の成果を支える仕組みとして、上司との1on1の導入や、研修の目的を経営層と共有する取り組みもご提案しています。研修の「やりっぱなし」を防ぎ、ゴールまで伴走することで、確実な成果へとつなげます。
具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。
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ビジョン反映型カスタマイズ研修
特徴1.ビジョン反映型研修
お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。
特徴2.社会の変化・新たなキーワードを取り入れた研修
お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。
特徴3.ワークショップ中心
受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。
研修の特徴 4. ゴールまで支援
研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。
今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。
株式会社ヒューマンエナジー
愛知県名古屋市西区名駅1丁目1番17号名駅ダイヤメイテツビル11階
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お急ぎの方はお電話ください(平日9:00~18:00)
この記事を書いた人

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)
【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了
1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。
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