【コラム】 若手が休みがち 、その時どう動く? ~初動対応と根本解決で乗り越える世代間ギャップ~

目次

新入社員たちもそろそろ職場に慣れてきた頃かと思っていた矢先、「 若手が休みがち 」、「毎回、体調不良と言うけれど、普段は元気そうに見える」、「注意したいけれど、ハラスメントと誤解されるのが怖くて踏み込めない」、そんな声を、人事や現場リーダーの方々からよく耳にします。

かつてのように「新人が休むなんてあり得ない」と一喝するような時代ではありませんし、放置すれば別の問題に発展することもある――そのはざまで、どう対応すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。難しいのは、背景にある価値観や事情は人それぞれであり、一律の正解がないということ。だからこそ、感情的にならず、冷静かつ柔軟に向き合う姿勢が求められています。

本稿では、「 若手が休みがち 」と言われるが実態はどうなのか、背景にある環境要因をひも解きながら、現場での初動対応から長期フォローの対応策を整理していきます。

1)「休みがち」とは、

一般的な休暇制度(年次有給や病欠など)を超えて欠勤をしたり、繰り返しの休暇取得、突発的な自己都合での休みが続く場合などに言われます。特に新入社員の場合、有給休暇の付与前(入社半年未満)に欠勤が重なると、たまたま体調不良だったか、それ以外の背景があるのか、対応を検討する必要が出てきます。

2)休む理由のTOPは体調不良

エン・ジャパンの調査「遅刻・欠勤の伝え方調査(2024年)」では、アルバイトではありますが「直近1年で遅刻・欠勤経験がある」と答えた若手層が77%にのぼりました。そして欠勤理由の最多が「体調不良」であること、また休むときの連絡手段は電話とともにLINEが多くをしめており、コミュニケーションスタイルの変化も浮き彫りになっています。

これらの数字が示すのは、働く現場において「急に体調不良で休む=例外」だった時代は終わり、体調不良で休むことは一般化しており、「意識のハードル」は下がっていることが伺えます。

『エンバイト』ユーザー1100人に聞いた「遅刻・欠勤の伝え方」調査ー『エンバイト』ユーザーアンケートー 2024年

3)隠れがまん派も一定数いる

その一方で、隠れがまん派が多数いるのも事実です。月刊総務「働くことと不調に関する意識調査(2024年 ツムラ調査)」によると、社会人歴3~5年目の20歳代・30歳代男女1000人を対象に調査した結果、約6割の社員が「4月は体調不良を我慢しがち」と回答し、そして3人に1人が入社3ヶ月以内に体調を崩した経験があると答えています。つまり、3年以上の安定した継続勤務をしている社員でも、一定数は入社後に不調を感じていたことが明確になりました。また海外事例にはなりますがデロイト社の「2024 Gen Z & Millennial Survey」によれば、Z世代の 40% が「常にストレスを感じる」と回答していることも明らかになっています。

これらによって入社後の欠勤の裏には「本当に体調が悪い」、「無理をしていた」というケースも多く、有給が付与される前であったとしても、休むことを単なる“甘え”と一括りにするのは危険だということもわかります。

月刊総務オンライン編集部 2024年03月
新入社員の「隠れがまん」に要注意 「甘え」とせずに相談できる環境が定着アップ(ツムラ調査)

さらに、厚生労働省の調査によると、13.5%の事業所で「メンタルヘルス不調により1カ月以上休業した労働者」が存在しており、その多くが20代でした。短期的な欠勤が放置され、やがて長期休職につながるリスクも見逃せません。

厚生労働省 令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況

このように、“ 若手が休みがち ”という印象は、休むことへの意識のバードルが下がっている心理面の他、実際に1/3は体調不良を起こしていることや、どの企業においても休みがちな社員が一定数は発生しうる状況にあるなどの現実が絡み合っており、決して数が多いわけではないが、従来に比べると増えていることが伺えます。ここから、不調の理由が「甘え」なのか「サイン」なのか、冷静に見極める視点が今の管理職や人事には求められています。

新入社員が社会人生活に慣れていない段階で欠勤する可能性が従来よりも高まっている事実は、ある程度ご理解いただけたかと思います。一方で「簡単に休む癖をつけてほしくない」と考える職場側の思いも理解できます。ただし、今の若手と先輩世代とでは環境や価値観が大きく異なっており、過去の基準だけで接することは問題の本質や解決策を見誤る恐れがあります。ここでは、休みに対する世代間の認識の違いを背景別に整理します。

メンタル負荷の増大

前述の調査結果における「隠れがまん」のように、4月という環境変化が大きい時期に適応を求められ、ストレスを抱えがちな実態が表れています。その他、海外においてもデロイト社の「2024 Gen Z & Millennial Survey」によれば、Z世代の 40% が「常にストレスを感じる」と回答していることも明らかになっています。

複雑化した社会においてストレスの要因は一概には語れませんが、新人の環境に注目してみると、コミュニケーション摩擦への免疫不足、業務の複雑化やスピード感への追従の難しさ、顧客や上司の指示に従う必要からの精神的な負荷の高まりなどが挙げられます。従来よりも安全に守られて育ち社会に出るため、この段階での環境変化が先輩達の時代よりも大きなギャップや戸惑いになっていると考えられます。

② 育った環境による教育方針の違い

上司世代は、学校時代の皆勤賞や、欠勤での評価低下やボーナス減など「実害」があった時代を経てきたこともあり、「休む=評価が下がる」という認識が高く、「無理してでも出社する」ことが常識でした。

一方若手は、学校教育でも「無理をしない」「体調管理が最優先」という方針で育っています。またコロナ禍や過労死が取りだたされたことも絡み、ライフが頭にくるライフ・ワークバランス、健康優先、多様性重視の価値観が高まっています。そのため主体的に休むことが自己管理の現れであり「自分を守る当然の行為」と考える傾向にあります。

団体行動への配慮の希薄化

Z世代は学生時代から自由度の高い環境で育ち、「休む=当然の選択」という意識が形成されています。大学の出席自由化やアルバイトの柔軟性、コロナ禍のオンライン授業などが背景です。

また、地域活動や部活動、兄弟・親戚関係など集団生活の経験が従来よりも乏しく、自分の欠勤が周囲に与える影響を想像しにくい傾向があります。加えて、SNSなどの非対面・非同期コミュニケーションに慣れていることから、相談や事前連絡が希薄になりがちです。

④企業文化と社会環境の変化

2025年4月の有効求人倍率は1.26倍と依然売り手市場が続き、若手にとって「辞めても次がある」という離職に対する危機感の希薄さは先輩世代のそれとは異なるでしょう。このような採用競争の激化やハラスメント対策が進む中、多くの企業が「休みやすさ」や「心理的安全性」など「働きやすさ」における企業文化の改善に努め、アピールをしています。これにより、求職者側も「休みやすい職場か」「メンタル不調への理解があるか」を企業選択時に重視するようになっています。これらの影響の結果、現場でもし問題になるような休み方をしたとしても注意される機会が減り、社会人になっても休みに対する心理的ハードルはさほど高まらないと考えられます。

休みがちな若手社員への初動対応は、感情的にならず、戦略的にアプローチすることが重要です。

① 事実確認を最優先する
まず、「休みがち」という状況を客観的に把握することから始めます。感覚的な判断ではなく、具体的な数字で現状を整理します。この事実確認により、問題の深刻度と対応の緊急性を正しく判断できます。

  • 過去3ヶ月の欠勤日数と理由の記録
  • 欠勤パターンの分析(特定の曜日、時期、業務内容との関連性)
  • 他のメンバーとの比較データ
  • 業務への影響度の測定

② 個別面談による背景理解
事実が整理できたら、感情的にならず、冷静に個別面談を実施します。この時重要なのは、「叱責」ではなく「理解」を目的とすることです。面談では以下の点を確認します。

  • 体調面での問題の有無
  • プライベートでの変化や課題
  • 業務内容や職場環境への不安や不満
  • キャリアや将来への考え方

現在のコンプライアンス環境下では、従来の指導方法では効果が期待できません。新しいアプローチが必要です。

① 「影響の見える化」による気づき促進
直接的な叱責ではなく、本人の行動が周囲に与える影響を「見える化」することで、自主的な気づきを促します。

  • チーム全体の業務スケジュールの共有
    個人の欠勤がプロジェクトに与える影響を可視化
  • 同僚へのインタビュー結果の共有
    周囲の状況を(匿名で)フィードバックし、理解してもらう
  • 顧客への影響の共有
    実際に影響があった場合は、具体的な事例を共有する

② 段階的な目標設定とフォローアップ
一度に大きな変化を求めるのではなく、段階的な改善目標を設定します。
これらの各種施策については、個別対応が重要となりますので、都度、上長による判断と設計が必要となります。重要なことは以下です。

  • 定量的・期限のある目標を決める
     「いつまでに当日連絡の欠勤をなくす」などの目標を決めましょう。こういった取り組みは、期限を決めないといつまでも現状を追認してしまうことになります。
  • 目標は流動的なものだと認識する
    一方で、人間の気持ちが関連するこうした問題は、目標をとにかく守らせることが重要ではありません。むしろ目標を守らせようとするあまりプレッシャーが強まってしまい、会社に対してのロイヤリティが下がってしまうことも十分に考えられます。定期的な面談を行い、目標の見直しも柔軟に行いましょう。

初動対応では、必ず記録を残し、継続的なモニタリング体制を構築します。特に、管理者もこうしたケースの場合は「印象」でものを見がちです。見た目の態度や、最初の印象に左右され、欠勤率が改善していても気づかないケースなどもありますので、記録を作っておくことが非常に重要です。これらがいざという時の根本的な解決策を検討する際の重要な判断材料となります。

① 面談記録の作成

  • 面談日時と参加者
  • 話し合った内容と本人の反応
  • 設定した目標と期限
  • 次回面談の予定

② 行動変化の記録

  • 欠勤頻度の変化
  • 勤務態度の改善状況
  • 同僚との関係性の変化
  • 業務パフォーマンスの推移

1)研修によるアプローチ

研修によるアプローチにおいては、若手に対するものと、リーダー管理職向けに対するもの、双方が重要となります。若手には「ルールだから」「当然やるべきことだから」という姿勢ではなく、「チームワークのある状態がなぜ望ましいのか」「会社に対するコミットメントが高い状態とはどういう状況か」をイメージできるような研修が望ましいです。結果として、前向きに出社をしたいと思い、やむを得ず出社できないときは率直に伝えられる関係性を目指します。

2)仕組化によるアプローチ

仕組化による工夫とは、研修以外の日常業務の場において、早く問題を認識し、また若手が悩みを持った際に相談できる体制を作ることです。1on1の仕組みは導入されているが形骸化している、手ごたえを感じられない企業などは、いったん内容を見直し、改善を図ることが有効な手立てになる場合があります。また評価システムやコミュニケーションシステムを変えることで、心理的安全性を高めることも中長期的に非常に重要な打ち手といえるでしょう。

  • 数字で現状を把握する(1/3は体調不良、長欠13.5%など)
  • 背景を多面的に読み、世代間ギャップを埋める(メンタル・教育環境・市場
  • 初動対応:「測る→共有→フォロー」
  • 根本解決:教育と制度を同時にアップデート

若手が休みがち なのは“甘え”ではなく、組織設計のアップデートを迫るサインです。「休む」を責めるのではなく、「戻って来やすい仕組み」を創る──これが世代間ギャップを埋める最大の近道です。


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・株式会社こころみ 代表取締役
・株式会社ウェブリポ 代表取締役
<外部役員・他>
・株式会社イノダコーヒ 取締役
・NPO法人カタリバ 監事
・医療AI推進機構株式会社 監査役
・株式会社テレノイドケア 顧問
・流通経済大学 非常勤講師

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