【コラム】 プレイングマネジャー を救え!成果と育成を両立させる方法とは

 プレイングマネジャー の悩み

目次

現代の企業組織において「 プレイングマネジャー (プレイヤーとマネジャーを兼任する管理職)」は、もはや当たり前と言ってよい存在です。産業能率大学が実施した「上場企業の課長に関する実態調査」によると、上場企業の課長の実に98.5%が プレイングマネジャー であり、算出した加重平均でもプレイング業務が49.1%に達しています。この調査では、プレイヤーとしての役割が全くない課長はわずか1.5%しかおらず、ほとんどの課長がプレイヤー業務とマネジメント業務を両方担っていることが明らかになりました。

また、リクルートワークス研究所の調査でも同様の傾向が見られており、87.3%のマネジャーがプレイング業務を行っていると回答しています。さらに驚くべきことに、約3割のマネジャーがプレイング業務に自身の仕事時間の50%以上を費やしている実態が浮き彫りになりました。

このような状況の中、管理職のモチベーションが低下傾向にあることが懸念されています。パーソル総合研究所の調査によると、管理職になるにつれて「働く幸せ実感」が低下していることが分かりました。特に課長相当の役職では、「はたらく幸せ実感」が一般社員よりも低下していることが示されています。

この状況は、多くの管理職が感じている業務上の課題と密接に関係していると考えられます。ある調査によると、「人材不足」と「自分の業務量の増加」が上位に挙げられており、多くの管理職が常に忙しく、余裕のない状況を「課題」と感じているのです。

さらに深刻な問題として、管理職を目指したいと考える社員が減少していることが挙げられます。パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査 2024」によると、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人はわずか17.2%で、2021年の調査から6.8ポイント下降しています。

 プレイングマネジャー の悩み 管理職になりたいか
出典:パーソルホールディングス株式会社 管理職になりたくない社員がなぜ増えるのか|原因と対策を解説 より

特に20代の若手社員では、管理職を希望する割合が2021年の36.4%から2024年には28.2%と大きく低下しています。また性別で見ると、「管理職になりたい」と回答した人は男性で20.4%、女性で12.3%と、女性の管理職志向が特に低いことも明らかになっています。

こうした状況により、企業は「自分の後任を担える人材・次世代リーダーが育っていない」という深刻な人事課題に直面しています。リクルートマネジメントソリューションズの「人事・組織戦略における課題調査」では、この課題が最も多く挙げられており、特に経営層が抱える大きな問題となっています。

プレイングマネジャー が自ら仕事を抱えてしまうのには、いくつかの構造的な要因があります。リクルートワークス研究所の調査によると、プレイング業務を行う主な理由として以下が挙げられています。

1. 業務量が多く、自分もプレイヤーとして加わる必要がある (57.3%)
2. 部下の力量が不足しており、自分もプレイヤーとして加わる必要がある (37.3%)
3. 自分がプレイヤーとして加わらないと、当期のチームの業績目標が達成できないため (30.3%)

これらの結果から、マネジャーが責任を持つ現場の厳しい実態が浮かび上がってきます。チームとして達成すべき業績目標やミッションを成し遂げるためには、以前よりも高度かつ大量の業務をスピーディに処理する必要がある一方で、人手不足の環境下で十分なスキルを持った部下を確保するのは困難です。さらに、働き方改革の影響もあり、部下の超過労働を減らすためにマネジャー自身が業務を抱え込む傾向も見られます。

実際には、 プレイングマネジャー が自ら業務を抱え込む本質的な要因として、以下の3つが考えられます。

①  役割肥大化:成果と育成両方に責任

   マネジャーには、部門の業績達成という「成果への責任」と、部下の育成・成長という「育成への責任」の両方が課せられています。これらの役割は時に相反する側面を持ち、日々の業務において両立させることは極めて困難です。そして経営からの圧力は常に「成果への責任」のほうが高く、目先の目標達成のために、プレイヤーとしての能力が高い自らが行動して数字を達成することとなります。

②   リソースの不足(人材/予算) 

   多くの組織では、適切な人材や予算のリソースが不足しています。特に少子高齢化、労働人口の減少といった社会的背景の中で、十分なリソースを確保することが難しくなっており、マネジャー自身が現場で手を動かさざるを得ない状況が生じています。

 最近では、企業の「ホワイト化」が進み、特に若手の離職を意識すると残業を頼むこともできず、残業代が発生しないマネジャーが時間を使い、自ら業務を処理するというケースも生まれています。

③   スキルとマインドのギャップ 

   多くのプレイングマネジャーは、優秀なプレイヤーとしての実績を買われて昇進したケースが多く、マネジメントスキルやマインドセットの面でギャップを感じていることも少なくありません。つまり部下のプレイヤーとしての能力に不満を覚えるケースが多くあります。特に「信頼して任せる」というマインドセットへの転換が難しいことが、プレイング業務の比率を高くする一因となっています。

リクルートワークス研究所の調査によると、プレイング業務比率が40%を超えると業績が落ちる傾向にあることが明らかになっています。

プレイングマネジャーの悩み 業務割合
出典:リクルートワークス研究所 Works Report 2020「プレイングマネジャーの時代」より

具体的には、プレイング業務の割合とチーム成果の関係を分析した結果、プレイング業務をまったく行わないマネジャーのチーム成果指標の平均値が3.08であるのに対し、プレイング業務の割合が「20%~30%未満」のマネジャーのチーム成果指標は3.27と最も高くなっています。一方、プレイング業務の割合が増えるにつれて、チーム成果指標は徐々に低下し、「80%以上」のマネジャーでは2.86と最低値を示しています。

これらの結果から、目指すべきプレイとマネージのバランスとして、以下の3つのポイントが重要と言えます。

 プレイングマネジャー の悩み プレイとマネージの最適なバランス

①プレイングの比率を30%以下にする

プレイング業務の割合を30%以下に抑えることで、マネジメント業務に十分な時間を確保し、チーム全体の成果を最大化することができます。
 これはリクルートワークス研究所での統計データから出ている数字ですが、マネジャーの皆様からすると、肌感覚のある数字として認識できるのではないでしょうか。少なくともプレイヤーとしての業務が立て込んでくると、「やるべきマネジメント業務ができていない」と感じることが多いように自分自身も感じます。

プレイングする仕事の中身を吟味する

 マネジャーがプレイヤーとして関わる業務は、戦略的に選ぶことが重要です。特に改善レベル、変革レベルの仕事など、知識と経験が必要で、ネットワークを活用して変化を起こすことが求められるような高度な業務には、マネジャー自身が関わることでチーム成果にプラスを与えることができます。また、誰もやったことがない新しい業務、定型的なものがなにもない業務なども、経験と知識を必要とするため、若手に任せることが必ずしも良い結果を生まないケースがあります。さらに上長を巻き込んだ業務の場合は、中間管理職であるマネジャーが積極的にかかわることで組織としての推進力となることが期待できます。

プレイングしながら業務改善と部下の教育を行う

プレイング業務を行う際には、単にタスクをこなすだけでなく、常にマネジャーとしての視点を持ち、それを部下の育成や業務改善に活かすことが重要です。自身のプレイング業務を通じて部下に良い影響を与えることで、チーム全体のパフォーマンス向上につなげることができます。例えば、自分の効率的なやり方を部下に見せたり、ともに働きながら部下のコンディションや悩みを把握する、新しいアイディアや方法を一緒に試すなどです。ただのタスク消化・ノルマ遂行ではなく、マネジメント業務実行のための時間に転換してしまう、という発想です。

しかしながら、プレイング比率を30%以下にする、仕事の中身を吟味する、業務改善と部下の教育を兼ねる、どれもわかってはいるけどもなかなかできない、というのが実態ではないでしょうか。そうした難しさを乗り越えるための具体的施策が、以下の3つの手段となります。

 プレイングマネジャー の悩み うつべき手段

プレイングマネジャー の課題を解決するための第一のアプローチは、制度面からの改革です。特に評価制度を見直すことで、マネジャーの行動や意識を変えることが可能になります。

単なる部門の結果指標によるKPIではなく、マネジメントがなされているか、組織の成長のための手が打てているかを評価する

多くの企業では、マネジャーの評価は担当部門の売上や利益などの「結果指標」に偏りがちですが、これではプレイング業務に注力せざるを得ない状況を生み出してしまいます。評価制度を見直す際には、以下の点を重視することが重要です。

  • 部下の育成や成長への貢献度
  • チーム全体の生産性向上への取り組み
  • プロセス改善やイノベーションの推進
  • 適切な権限委譲と部下の自律性の促進 これらの要素を評価項目に加えることで、マネジャーがマネジメント業務に注力するインセンティブを創出できます。

単なる評価だけでなく、フィードバックプロセスなどを通じて会社の哲学として伝える

評価制度の改革には、単に評価項目を変更するだけでなく、フィードバックプロセスを充実させることも重要です。定期的な面談や360度評価などの多面的なフィードバック、そして継続的なコーチングを通じて、企業が目指すマネジメントのあり方を「会社の哲学」として浸透させることが効果的です。

特に注目すべきなのは、マネジャー登用前の評価・アセスメント制度の導入です。本人の希望や適性、チームメンバーからのフィードバックなどを総合的に評価し、マネジメント適性を見極めることで、適切な人材をマネジャーに登用できます。また、マネジャーになってからも継続的に多角的な評価を行うことで、マネジメントスキルの向上を促進することが可能です。

次に重要なのは、業務プロセス自体の見直しです。 プレイングマネジャー の負担を根本から軽減するためには、業務の効率化や再設計が欠かせません。

そもそも不要な業務をなくす・プロセスを簡素化する

まず取り組むべきなのは、既存の業務フローを徹底的に見直し、不要な業務や重複した作業を排除することです。例えば、定型的な報告書や会議の必要性を再評価し、本当に必要なものだけを残すというアプローチが効果的です。また、自動化できる業務は積極的にITツールなどを活用して省力化を図ることも重要です。

業務プロセスの簡素化には、以下のような具体的な手法が有効です。

  • 業務の棚卸しと必要性の検証
  • 会議の目的と頻度の見直し
  • 報告書やドキュメントの書式と量の簡素化
  • デジタルツールの活用による業務自動化

業務を見直し、部下にできる仕事を改めて洗い出す

プレイングマネジャー が自ら抱え込んでいる業務の中には、実は部下に任せられる仕事も少なくありません。業務を詳細に分析し、以下の視点で整理することが重要です。

  • 各業務に必要なスキルレベルの特定
  • 部下の成長につながる挑戦的な業務の抽出
  • 定型業務と判断業務の切り分け
  • 段階的に権限委譲できる業務の特定 このプロセスを通じて、マネジャーは本来自身が担うべき業務に集中することができるようになります。

工夫をしたりやり方を変えることで部下に任せられる仕事を見出す

一見すると部下に任せるのが難しそうな業務でも、やり方を工夫することで委託可能になるケースがあります。例えば、複雑な業務をいくつかのシンプルなステップに分解したり、チェックリストやマニュアルを整備したり、ペアワークを導入するなどの工夫が考えられます。

効果的な権限委譲のためには、以下のようなアプローチが有効です。

  • 業務の標準化とマニュアル化
  • 部分的・段階的な権限委譲
  • OJTやメンタリングの充実
  • 失敗を許容する文化の醸成

最後に、 プレイングマネジャー のスキルとマインドセットを向上させるためのマネジメント研修が重要です。適切な研修を通じて、 プレイングマネジャー は効果的なマネジメント手法を習得し、実践に活かすことができます。

部下に任せられる仕事を洗い出し、任せてみるというマネジメント側からのアプローチ

(ア) マインドセットの変革
多くの プレイングマネジャー は、「自分でやったほうが早い」「部下に任せると品質が下がる」といった思い込みにより、仕事を抱え込む傾向があります。このようなマインドセットを変革し、「部下に任せることが自分の役割である」という意識を醸成することが重要です。

研修では、以下のような内容が効果的です。

  • 「コントロール」から「信頼」へのパラダイムシフト
  • マネジャーの役割と責任の再定義
  • 権限委譲のメリットと効果的な方法
  • コーチングの基本スキル

(イ) 現状に対する気づき
研修を通じて、自身の行動パターンや時間の使い方を振り返り、現状の課題に気づくことも重要です。特に自己分析やピアレビューを通じて、自分がどのような状況でプレイヤー業務に偏りがちなのかを客観的に認識することが、行動変容の第一歩となります。

(ウ) 具体的な行動変革の計画策定
研修の最終段階では、学んだ内容を自身の職場で実践するための具体的な行動計画を策定します。SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限がある)な目標設定と、それを達成するための行動ステップを明確にすることで、研修後の実践につなげることができます。

業務の見える化を行い、業務効率化を実施するという業務プロセス見直し側からのアプローチ

(ア) 業務改善方法の体得
業務改善の基本的な手法やフレームワーク(例:PDCA、5S、ムダ取り、ボトルネック分析など)を学び、自身の職場での適用方法を習得します。また、チームメンバーを巻き込んだ改善活動の進め方についても学ぶことで、組織全体の効率化を推進できるスキルを身につけます。

(イ) 業務の見える化
業務の見える化は、改善の第一歩です。研修では、以下のような手法を学びます。

  • 業務棚卸しの方法
  • プロセスマッピングの技法
  • タスク分析とボトルネックの特定
  • 業務の可視化ツールの活用

(ウ) 具体的な検討の実施
研修の中で、実際の自部署の業務を題材にしたケーススタディやワークショップを行います。これにより、研修で学んだ内容を実践に直結させ、具体的な改善策を持ち帰ることができます。また、他の参加者との意見交換を通じて、多様な視点からの気づきを得ることも可能です。

プレイングマネジャー が直面している課題を解決し、彼らが本来のマネジメント業務に集中できる環境を整えることは、組織の持続的な成長にとって不可欠です。そのためには、以下の3つのアプローチを総合的に実施することが効果的です。

  1. 評価制度の改革
    マネジメントの質や部下の育成・成長への貢献を適切に評価し、フィードバックプロセスを充実させることで、 プレイングマネジャー に正しい行動を促します。 
  2. 業務プロセスの再設計
    不要な業務の削減や業務プロセスの簡素化を行い、効果的な権限委譲により、マネジャーの負担を軽減し、部下の成長機会を創出します。
  3. マネジメント研修の実施 
    マインドセットの変革から具体的なスキルの習得まで、 プレイングマネジャー の能力開発を総合的にサポートします

これらの取り組みにより、 プレイングマネジャー のプレイング業務比率を適正な30%以下に抑え、彼らが本来の役割である「チームの成果最大化」と「部下の育成・成長」に注力できる環境を整えることが可能になります。そして、そのような環境が整うことで、「管理職になりたい」と感じる社員が増え、組織の次世代リーダー育成という課題の解決につながるでしょう。 プレイングマネジャーを「救う」ということは、単に彼らの負担を減らすだけでなく、組織全体の生産性向上と人材育成の好循環を生み出すことなのです。成果と育成の両立という課題に正面から向き合い、適切な解決策を講じることで、プレイングマネジャー自身も、組織も、共に成長していくことができるでしょう。


※本コラムの内容に研修実例を交えて、2025/6/16(月)無料オンラインセミナーにて講演いたします。是非、お申込み、ご視聴ください。

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具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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【コラム】不景気に研修をやめる企業は、なぜ損をするのか? ~逆境に強い教育設計~

研修コスト最適化,研修コスト削減,企業研修

目次

景気が悪化すると、「まずは研修費から削ろう」と考える企業は少なくありません。実際、2008年のリーマンショック時には、企業の63%が社員研修などの人材育成費用を削減したという調査があります(AIHR調査)。

この傾向は日本企業でも見られ、産労総合研究所の調査(下図参照)では、一人あたり研修費用がバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックのたびに大幅に落ち込んでいることが読み取れます。人材育成の必要性が叫ばれている中でも、失われた30年の間、一人当たり研修費用は結果として横ばいとなっていることが分かります。

研修サイクル,研修推移,研修コスト

なぜ景気悪化のたびに研修コストが削減されるのでしょうか。研修のROIが定量的に示されていないことに一因があると考えられます。つまり「目に見える成果がない」=「削っても支障がない」と判断されてしまっている可能性があります。しかしハーバード大学の調査では、不況時にコスト削減ばかりを優先した企業は、景気回復後に十分な成長ができなかったという結果が出ています。

研修投資,研修ROI,

研修を「コスト」と見るか「投資」と見るかで、企業の将来は大きく変わります。米国のロリー・バシー博士による研究では、研修投資のROIが平均300%(=1ドルの投資で6.72ドルの利益)に達するという驚異的なデータが示されています(AgileVelocity調査)。

加えて、研修を削減するリスクは人的資本の損失です。厚労省の資料によれば、正社員一人あたりの採用コストは約93万円(2019年時点、中途採用実態調査)にのぼり、離職による損失は業務引き継ぎの非効率や職場の心理的負担など、数値化しにくい損失も多大です。

リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」
研修効果,エンゲージメント,離職率

研修は単なるスキル付与にとどまらず、従業員の“会社への期待”や“愛着”を高める装置としても機能します。リンクアンドモチベーション社の調査によれば、社員が離職を考える最大の理由は「成長実感の欠如」であり、エンゲージメントの高低と離職率には明確な相関があるとされています(BuzzKuri記事)。

また、サイボウズ株式会社では、自社研修やキャリア自律支援制度の導入を通じて、離職率を28%→4%にまで大幅に改善しています。

研修がある企業とそうでない企業の間では、以下のような差が明確です
 • 離職率の減少
 • モチベーションの向上、仕事満足度・チーム連携強化
 • 「会社が自分の成長を応援してくれる」という帰属意識の形成
これらはすべて、企業にとっての「戦力の維持」と「現場力の強化」という形で還元されます。

研修効果, 研修手法最適化, 研修コスト最適化

不況など経営環境が厳しい中でも人材育成を止めるわけにはいきません。研修予算が限られる状況では、研修投資の「再焦点化」(Refocus)、研修手法の「再配分」(Redirect)、研修資源の「再構築」(Restructure)という3つの視点から戦略的に施策を講じることが重要です。

以下、それぞれの概要と日本企業の具体的な取り組み事例を紹介します。

1.Refocus(再焦点化):研修ニーズの重点化

研修ニーズ重点化,再焦点化

限られた予算は、今まさに必要なスキルや将来の成長に不可欠な能力に集中投下します。まず自社のスキルマップや人材要件を見直し、優先すべき能力領域を特定します。例えば、SMBC日興証券では、2020年にLMS(学習管理システム)上で150以上の部署別に必要スキルを定義した「Nikko Palette」を導入し、各スキル項目から該当する学習コンテンツに直接アクセスできる仕組みを構築しました。これにより従業員は自身に足りないスキルを自覚しやすくなり、必要な教材に素早くたどり着けるようになっています。

同様にアサヒビールは、2018年に社内ポータル「Career Palette」を開設し、職種ごとのジョブディビジョンスキル表(スキルマップ)を研修体系の核に据えました。体系化されたスキルと具体的教材を紐付けてメニュー化した結果、eラーニングの月間PV数が500から6,000へと12倍に拡大するなど学習活性化に成功しています。

弊社でも研修のご提案だけでなく、スキルマップの見直しや等級に応じたスキルマップ構築からご支援させていただくこともあります。スキルマップ自体が、研修プログラムと密接に結びついていることが重要だと言えるでしょう。

従業員のスキルおよびモチベーション維持の観点からは、特に新入社員研修は守るべき研修と言えるでしょう。あわせて、将来のリーダー人材の育成も優先投資領域です。実際、不況期には研修対象を絞り、高い潜在力を持つ次世代リーダー候補に集中的な育成機会を与える企業が増えています。このように研修資源を重要スキル・重要人材に再焦点化することで、経費対効果を最大化します。

2.Redirect(再配分):研修チャネルと手法の見直し

研修チャネルと手法の見直し,再配分

研修方法を工夫し、低コストで効果の高いチャネルや学習手法に再配分します。コロナ禍以降、多くの日本企業が対面研修をオンライン研修やVR研修に切り替え、移動・会場費を削減しつつ研修の継続性を確保しました。たとえばコンビニ大手のファミリーマートは2023年より順次VRによる店舗オペレーション研修を導入しています。VRならば場所や時間を選ばずスタッフが自律的に学習でき、さらに同社のVR研修コンテンツは日本語を含む10カ国語に対応しているため、増加する外国籍スタッフの教育にも役立ちます。実際に2020年度入社の社員研修に試行導入した際は、VR研修により人が教えていた場合の約3分の1の時間で習得が可能となり、1人当たり約60時間の研修時間削減を達成しました(ファミリーマート)。これは大幅なコスト・工数削減とスピード育成を両立した好例と言えます。

ただし、単なるオンライン研修の導入だけでは、効果が見込めない場合もあります。オフライン・オンライン双方の研修講師をしている立場からは、オンライン研修における受講生の集中力は格段に落ちます。また、企業への帰属意識や同僚との共同作業による一体感の醸成なども期待できません。部分的にはオンライン研修を取り入れつつ、重要な研修は引き続きオフラインで行うことが必要だと考えます。

さらに、オンライン研修の効果を高めるためには研修コンテンツの設計手法も重要です。ただ動画を垂れ流すのではなく、「Tell(説明)→ Show(実演)→ Do(実践)→ Apply(応用)→ Reflect(振り返り)」といった学習プロセスに沿ってコンテンツを構成することで、受講者の主体的な参加と定着を促します(Shiftelearning)。

限られた予算下ではこのような基本に忠実な設計で研修効果を最大化することが肝要です。各社ともWeb会議システム+オンライン教材を部分的に活用した研修や、動画視聴と対話セッションを組み合わせたブレンデッドラーニングなどを取り入れ、研修手法を最適化(再配分)しています。

3.Restructure(再構築):研修予算・リソースの再設計

研修予算・リソースの再設計,再構築

最後に、研修に割ける限られた資源を構造的に組み替え、持続可能な形に再構築します​。具体的には以下のような施策が取られています。

  • 研修費用の再編成とコスト見直し: 既存の研修プログラムや契約を精査し、費用対効果の低いものを縮小する一方、重要施策には予算を振り向けます。必要に応じて、研修の一部を市販の定額制のオンライン学習サービスで代替することも手法の一つです。ただし、一般向けのオンライン学習サービスのみで研修を完結させてしまうと、企業独自の育成を放棄することとなってしまうため、留意が必要です。
  • 公的助成金の活用: 国や自治体の提供する研修補助制度を積極的に利用してコスト負担を軽減することも有効です。厚生労働省の人材開発支援助成金などは、従業員の職業訓練に要した費用や訓練期間中の賃金の一部を助成してくれます。(​mhlw.go.jp)。不況期でも公的資金をうまく組み合わせることで研修投資を下支えできます。

社内メンター制度の強化: お金をかけずに社員の成長を支える仕組みとして、OJTとメンタープログラムの充実も欠かせません。新人や若手社員に対しては、アサヒビールのように入社後4ヶ月間、社内公募で集まった先輩社員が「ブラザー/シスター」(メンター)役となりマンツーマンで業務指導やメンタルケアまで担う制度を設けている企業もあります​(global-saiyou.com)。このような社内メンター制度を活用すれば、高額な外部研修に頼らずとも現場で実践的に人材育成が可能となり、定着率向上にも寄与します。ベテラン社員による勉強会の開催やナレッジ共有の仕組みづくりなども含め、社内の知見を最大限に引き出すことがコストをかけない研修モデルとして注目されています。ただし、急にメンターとして実力を発揮するのは難しいため、当初はメンター育成のための研修などを実施することが必要でしょう。

以上、Refocus(研修ニーズの絞り込み)、Redirect(研修手法の工夫)、Restructure(研修資源の再設計)の3つの観点から、不況期でも研修効果を最大化する施策と事例をまとめました。これらを組み合わせることで、短期的なコスト制約に対応しつつも人材育成の重要課題を先送りせずに済み、将来の競争力に繋がる人材投資を継続することができます(aihr.comaihr.com)。不況下でも工夫と戦略次第で人材育成は前進可能であり、各社の創意工夫に今後も注目が集まっています。

不況時こそ、企業は「何を残すか」の選択が問われます。人材育成はコストではなく、企業が未来を切り拓くための最重要資産です。
 • 短期: 離職率・モチベーション低下の抑制
 • 中長期: 組織力・競争優位性の維持強化
この両面において、研修の価値は今こそ再確認されるべきです。

そしてRefocus(研修ニーズの絞り込み)、Redirect(研修手法の工夫)、Restructure(研修資源の再設計)の3つの観点から、不況期でも研修効果を最大化する施策と事例をまとめました。これらを組み合わせることで、短期的なコスト制約に対応しつつも人材育成の重要課題を先送りせずに済み、将来の競争力に繋がる人材投資を継続することができます。
不況時の研修の実施にこそ、その企業の競争優位性の本質があると言えるのではないでしょうか。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。特に 「ゴールまで支援」 の観点から、研修後のフォローアップ施策まで一貫してサポートします。受講者が学んだことを 実務に活かし、確実に行動変容につなげるために、研修設計の段階からフォロー体制を組み込むことを重視しています。具体的には、研修後の事後課題、フォローアップ研修の設計を含めたフォロー施策を提案し、受講者が学びを継続できる環境を整えます。また、単なる知識の習得で終わらせず、「実践し、定着させる」ことを目的としたアクションプランを策定し、職場で活用できる仕組みを構築します。
さらに、研修効果を最大化するためには、受講者本人だけでなく、上司や人事、経営層の関与も欠かせません。そのため、組織全体で研修の成果を支える仕組みとして、上司との1on1の導入や、研修の目的を経営層と共有する取り組みもご提案しています。研修の「やりっぱなし」を防ぎ、ゴールまで伴走することで、確実な成果へとつなげます。
具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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【コラム】研修を「やりっぱなし」にしない!学びを定着させるフォローの科学(後編)

研修後のフォロー

「研修を受けて終わり」ではなく、「学んだことを職場で活かし、行動を変えること」が本当のゴールです。前編では、研修後のフォローがいかに重要かを、「エビングハウスの忘却曲線」や「トランスファー・オブ・トレーニング理論」の観点から解説しました。
では、研修の効果を“定着”させ、職場での“行動変容”を促すためには、具体的にどのようなフォローが必要なのでしょうか?
後編では、「 フォローアップ研修 」「1on1ミーティング」「フォローの仕組み化」という3つの強力な施策を紹介します。これらの施策を適切に実施することで、研修後の“学びの失速”を防ぎ、現場での“実践力”を引き出すことが可能になります。

「受けただけで終わらせない!」「学びを行動に変える!」
この後編を通じて、研修効果を最大化し、組織の成長につなげる実践的なヒントをお届けします。ぜひ最後までご覧ください。

前編「研修をやりっぱなしにしない!学びを定着させるフォローの科学(前編)」

研修を受けただけで終わらせず、「学びを振り返る機会」を設けることで、研修効果を大きく高めることができます。ここでは、 フォローアップ研修 の重要性と、研修後の実践を促進する仕組みについて解説します。


実践結果を持ち寄る仕組みを作る
受講者に「研修で学んだことをどのように業務で活かしたか」を整理してもらい、成功事例だけでなく、うまくいかなかったケースも共有します。課題を明らかにし、解決策を探ることで、より実践的な学びにつなげることが可能です。

振り返りを可視化する
「どのように仕事を任せたか」を記録し、具体的な事例をもとに振り返ります。ディスカッションを通じて、成功要因や改善点を明確にし、実務での応用につなげます。

実践を「次のアクション」につなげる
受講者同士で解決策を議論し、業務で試せる具体策を持ち帰ります。 フォローアップ研修 後も学びを継続できるよう、職場で実践を促す仕組みを構築します。

新しい知識や視点を加える
フォローアップ研修 は、過去の学びを振り返るだけでなく、新しい知識や視点を加えることで、受講者の学習意欲を高めることができます。例えば、リーダー力向上研修では、研修本編で「リーダーとしての適切な仕事の任せ方」を学び、 フォローアップ研修 では「心理的安全性を高めるフィードバックの手法」を新たに追加しました。このように、新しい学びを少し加えることで、「研修後も学びが進化し続ける」 というメッセージを伝えることができます。

課題
A社では、リーダー職を対象に「リーダー力向上研修」を実施しました。この研修では、「適切に仕事を任せるスキル」 を学びましたが、以下のような状況が見られました。
・研修直後は、「部下に仕事を任せ、見守るようにした」という声が多かった
・しかし、半年後には 「うまくいった人」と「うまくいかなかった人」 の差が生まれていた

A社が取り組んだフォロー施策
・研修後6ヶ月後に フォローアップ研修 を実施
受講者が「研修で学んだことをどう実践したか?」を振り返る場を提供
成功事例だけでなく、失敗事例も共有し、解決策を探る

・事後課題を設計し、実践の振り返りを促す
研修後1ヶ月後に、「実際にどのような行動を取ったか?」 をレポートにまとめる
「部下やチームにどんな変化があったか?」を振り返る

成果
・「学びを実践し続ける意識」が向上
・「他の人の話を聞いて改善のヒントが得られた」 という声が増加
・「試行錯誤することで結果が変わると気づいた」 受講者が増えた

フォローアップ研修 だけでなく、研修直後からの「事後課題の設計」 も重要です。
事後課題を活用することで、「知識を持ち帰るだけで終わらない」仕組みを作ることができます。

事後課題の設計ポイント
・学びを明文化する
研修の最後に 「本日の気づき」 を記録し、振り返りやすくする

・実践を促す
「実際にどんな行動を取ったか?」 を1ヶ月後にレポートとしてまとめる

・行動変容の成果を確認する
「部下やチームにどんな変化があったか?」 を共有し、学びを深める

研修効果を高めるには、「 フォローアップ研修 」と「事後課題」を組み合わせ、「学び → 実践 → 振り返り → 新たな学び」 のサイクルを作ることが重要です。

1 on 1の実施


研修で学んだことを実践に移すためには、上司の関与が欠かせません。 研修後に1on1ミーティングを実施することで、受講者が学びを振り返り、実務での行動変容につなげることができます。
ここでは、1on1を効果的に機能させるための 「心理的安全性の確保」 と 「GROWモデルを活用した進め方」 について解説します。

1on1ミーティングが効果的に機能するかどうかは、「心理的安全性(Psychological Safety)」が確保されているかに大きく左右されます。

心理的安全性とは?
・「この場で発言しても否定されない」「失敗しても受け入れてもらえる」という安心感がある状態。
・ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱し、チームのパフォーマンスを向上させる重要な要素 として注目されている。

1on1で心理的安全性を高めるポイント
・「それはいい視点ですね」「なるほど、そう考えたんですね」と相手の話を受け入れる。
・「なぜできなかったのか?」ではなく「どうすればもっとよくなるか?」に焦点を当てる。
・ 1on1は「上司の指導」ではなく、「部下が学びを整理し、行動につなげる機会」であることを念頭におく。

 心理的安全性が確保されると?
・ 受講者が研修後の実践について「成功・失敗の両方」を率直に話せる。
・ うまくいかなかったことも共有しやすくなり、学びの深まりにつながる。
・ 「やらされている」ではなく、「自ら実践し、成長したい」という主体的な行動が生まれる。

心理的安全性のある1on1を実施することで、研修の学びが単なる知識ではなく、「実務で試し、改善しながら成長するもの」へと変わっていきます。

GROWモデルを活用した効果的な1on1の進め方
1on1ミーティングを効果的に進めるためのフレームワークとして、「GROWモデル」 があります。受講者が「研修での学びを、実務でどう活かすか?」を主体的に考えられたり、上司が指示するのではなく、「どうすればよいか?」を引き出す関わり方ができたり、研修後の行動変容を、「自分で決めた目標」として継続しやすくなるメリットがあります。

 GROWモデルとは?
目標(Goal) → 現状(Reality) → 選択肢(Options) → 意志(Will) の4ステップで構成されるコーチング手法です。「一方的な指導」ではなく、受講者が自ら考え、行動することを促すのに適しています。

GROWモデルを活用した1on1の流れ
 1. Goal(目標):研修の学びをどう実践したいか?
受講者自身が目標を言語化し、意識を明確にする

 2. Reality(現状):今の状況はどうか?
実践状況を振り返り、成功と課題を整理する

 3. Options(選択肢):他にどんな方法があるか?
上司が答えを教えるのではなく、受講者自身が解決策を考える場にする

4. Will(意志):次にどんな行動を取るか?
「話して終わり」ではなく、具体的なアクションにつなげる

研修の成果を一時的なものにせず、組織全体に定着させるためには、受講者個人の努力に頼るのではなく、「研修が活きる組織文化」 を築く必要があります。そのためには、上司・人事・経営層を巻き込んだ仕組み化が不可欠です。ここでは、フォロー施策を単発の取り組みで終わらせず、組織全体で学びを共有し、定着させる戦略について解説します。

研修で学んだことを受講者だけの知識にとどめるのではなく、組織全体の共通言語として浸透させることが、実務での定着につながります。そのための施策として、以下の方法が有効です。

・上司に研修テキストを事前に共有し、内容を把握してもらう
→研修後のコミュニケーションが円滑になり、学びの実践をサポートしやすくなる

・全社員が同じ研修を受け、同じテーマで議論できる環境をつくる
→組織内で学びを共通言語化することで、「研修の内容がすぐに忘れられてしまう」「現場に戻ると周囲の理解がなく実践しづらい」といった課題を防ぐことができます。

研修は「やること」が目的ではなく、「従業員の行動を変えること」がゴールです。
そのために、適切な研修を設計し、研修会社と連携しながらブラッシュアップしていくことが重要になります。

研修を「やっただけ」で終わらせないためには、評価制度と連携させる仕組みが重要です。例えば、評価制度に基づいた研修を設計し、研修で学んだ内容が業務で求められる行動と直結する形にします。

具体的な方法として、以下のような施策が考えられます。
・研修の学びを「行動目標」として設定し、上司との1on1で確認する
・研修内容を業務評価の基準に組み込み、実践度を評価する
・研修後の行動変容をデータで可視化し、評価や昇進の要素に取り入れる

このように、研修と評価を結びつけることで、「受講しただけで終わらず、業務の中で実践し続ける」という意識を醸成できます。

研修を組織文化に根付かせるためには、上司の他に人事、経営層の関与を強化し、それぞれの立場から学びの定着をサポートすることが不可欠です。

人事の役割:「研修のフォロー施策を制度化する」
人事部門は、研修を単発のイベントではなく、業務の中に組み込まれた仕組みとして機能させる役割を担います。
・研修後の実践報告を義務化し、フォローアップを制度化する
・研修と評価制度を連携させ、実践度を評価に反映する
研修を受講者の自主性に委ねるのではなく、人事が制度としてフォロー施策を整備することで、学びの定着率を向上させることができます。

経営層の役割:「研修が組織成長に直結することを示す」
経営層を巻き込むには、研修の意義を「個人の成長」ではなく、「組織の成長や業績向上につながる施策」 として位置づけることが重要です。
・研修の成果を数値化し、組織の成長との関連を示す
・研修が企業戦略の一環であることを明文化し、経営層の理解を得る
例えば、「研修を受けた社員のエンゲージメントスコアが向上した」「研修を実施した部署の業績が前年比で向上した」などのデータを示すことで、研修への投資価値を経営層に納得してもらいやすくなります。

研修は「受けて終わり」ではなく、「学んだことを職場で活かし、行動に移すこと」が本当のゴールです。しかし、現実には研修の学びが定着せず、効果が薄れてしまうことも少なくありません。

前編・後編を通じて、科学的な視点を交えながら、研修後フォローの重要性と具体的な施策をご紹介しました。特に後編では、「 フォローアップ研修 」「1on1ミーティング」「フォローの仕組み化」という3つの実践的な施策を取り上げ、学びを行動変容につなげる具体的な方法を解説しました。

これらの施策を組み合わせ、研修の学びを職場で活かし続ける仕組みを整えることが大切です。「学んで終わり」ではなく、「実践し、試行錯誤を重ねながら成長していく」——そんな研修文化を組織に根づかせることができれば、研修の効果は大きく向上します。

学びを定着させ、組織全体の成長へとつなげるために、今回の内容をぜひ参考にしてみてください。研修後のフォローを充実させることで、学びが生きた成果に変わるはずです。

前編はこちらからご覧いただけます!「研修をやりっぱなしにしない!学びを定着させるフォローの科学(前編)」

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。特に 「ゴールまで支援」 の観点から、研修後のフォローアップ施策まで一貫してサポートします。受講者が学んだことを 実務に活かし、確実に行動変容につなげるために、研修設計の段階からフォロー体制を組み込むことを重視しています。具体的には、研修後の事後課題、フォローアップ研修の設計を含めたフォロー施策を提案し、受講者が学びを継続できる環境を整えます。また、単なる知識の習得で終わらせず、「実践し、定着させる」ことを目的としたアクションプランを策定し、職場で活用できる仕組みを構築します。
さらに、研修効果を最大化するためには、受講者本人だけでなく、上司や人事、経営層の関与も欠かせません。そのため、組織全体で研修の成果を支える仕組みとして、上司との1on1の導入や、研修の目的を経営層と共有する取り組みもご提案しています。研修の「やりっぱなし」を防ぎ、ゴールまで伴走することで、確実な成果へとつなげます。
具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

株式会社ヒューマンエナジー
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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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【コラム】研修を「やりっぱなし」にしない! 学びを定着させるフォローの科学(前編)

研修後のフォロー

「せっかく研修を実施したのに、現場で活かされていない…。」
「研修直後は意欲的だったのに、しばらくすると学びが薄れてしまう…。」
人材育成担当者として、このような悩みを抱えたことはありませんか?
実は、研修が成功するかのカギを握るのは、「研修の内容」そのものだけではなく、「 研修後のフォロー 」です。
どんなに質の高い研修を提供しても、その後に適切なフォローがなければ、学びは職場で活かされず、時間とともに忘れ去られてしまうのです。
研修は「受けたら終わり」ではなく、「フォローまでがワンセット」。
では、具体的にどのようなフォローを行えば、研修の学びを定着させ、実務で活かせる状態にできるのでしょうか?
本コラム前編では、「エビングハウスの忘却曲線」や「トランスファー・オブ・トレーニング理論」などの科学的な視点を交えながら、研修後フォローの重要性を解説します。また、すぐに実践できる具体的なフォロー施策もご紹介します。
コラム後編では「フォローアップ研修」「1on1ミーティング」「フォローの仕組み化」という3つの強力な施策を紹介します。これらの施策を適切に実施することで、研修後の“学びの失速”を防ぎ、現場での“実践力”を引き出すことが可能になります。

研修の効果は「受講後」に決まります!
明日から活かせる実践的なフォロー施策を、ぜひご参考ください。


せっかく時間とコストをかけて研修を実施したのに、受講者が内容をすぐに忘れてしまうと感じたことはありませんか?実は、これは脳の仕組みとしてごく自然なことなのです。
心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によると、人間は学習した内容の70%を、1日以内に忘れてしまうことが分かっています。
エビングハウスが発見した 「忘却曲線」 によると、以下のようなスピードで記憶が失われていきます。

時間経過と記憶の保持率


つまり、研修で「いい学びだった!」と感じても、1日後には半分以上が記憶から消えてしまうのです。

研修の学びを忘れさせないために、何をすべきか?
エビングハウスの研究は、「人は忘れる生き物である」という事実を示しました。しかし、逆に言えば 「適切なタイミングで復習すれば、記憶を定着させられる」 ということでもあります。

忘却を防ぐための施策
・研修後すぐに復習の機会を設ける(1on1やアクションプラン作成)
・1週間~1ヶ月後に事後課題を実施し、実践結果を振り返る
・学んだ内容を「教える・話す」機会を作る(ピアラーニングの活用)

学びを職場で実践し、繰り返し使うことで、知識が定着します。研修を「受けて終わり」にせず、フォロー施策を組み込むことが、学習効果を最大化するカギになります。

研修を実施したものの、「学んだことが職場で実践されていない」と感じることはありませんか? 実は、研修の内容が現場で活かされるかどうかは「研修の質」だけで決まるわけではないのです
ここで重要になるのが 「トランスファー・オブ・トレーニング(Training Transfer)」 という考え方です。
トランスファー・オブ・トレーニング(研修転移)とは、研修で学んだ知識やスキルが、実際の業務で活用されることを指します。この理論では、研修の効果が職場に定着するために、3つの要素が影響すると言われています。

(1) 研修の内容が「実務と結びついているか?」(学習内容の適用可能性)
研修の内容が受講者の業務に直結しているかどうかは、学習内容の定着度に大きく影響します。
・「今の仕事にどう役立つのか?」 が明確であるほど、学んだことを実践する意欲が高まる
・実際の業務シーンを想定した演習・ケーススタディがあると、応用しやすくなる
・汎用的な知識よりも、自社の業務に即した研修のほうが職場適用しやすい

(2)受講者に「研修で学んだことを実践しよう」という意欲があるか?(学習者の意欲)
研修を受けても、「まあ、いい話だったな」で終わってしまうケースがあります。学んだことを実践するかどうかは、受講者の意欲次第 です。
・研修前に「この研修で何を得たいか?」を考えさせる(目的意識を持たせる)
・研修後に「何を職場で実践するか?」を宣言させる(行動変容を促す)
・「実践しないといけない」というプレッシャーではなく、「試してみたい!」と思わせる工夫が大切

(3)研修後の職場環境が「学びの実践」を支援しているか?(環境要因)
研修で意欲的に学んでも、職場に戻った瞬間に「そんなことやってる暇ない」となると、学びは定着しません。学びを職場で活かすためには、以下の環境が整っていることが重要です。
・上司が「研修で何を学んだ?」と声をかける(学びを活かす雰囲気を作る)
・1on1ミーティングで実践状況を確認する(研修後のフォロー体制)
・「研修で学んだことを現場で試す場」がある(学びの実践機会)

この理論を踏まえると、研修を職場で活かすためには、次のような施策が有効です。
・研修内容を実務と直結させる(事例・ケーススタディを活用)
・受講者に学びの実践を意識させる(事後課題・アクションプラン作成)
・職場でのフォロー体制を強化する(1on1、上司の関与、フォローアップ研修)

つまり、 研修後のフォロー を仕組み化することが、学びを定着させる最も重要なポイントなのです。

参考:研修後こそがスタート!学びを現場に定着させるための方法


研修は 「受けて終わり」ではなく、「学びを職場で活かすこと」こそがゴールです。しかし、多くの企業では、研修直後の熱意が徐々に薄れ、学びが定着しないという課題を抱えています。
本コラムでは、「エビングハウスの忘却曲線」や「トランスファー・オブ・トレーニング理論」 などの科学的な視点から、研修後フォローの重要性を解説しました。これらの理論が示すように、学びを定着させるには、「個人の努力」に頼るのではなく、「組織全体で支援する仕組み」を整えることが不可欠です。では、具体的にどのようなフォロー施策を行えば、研修の学びを定着させ、実務で活かせる状態にできるのか?
後編では、「フォローアップ研修」「事後課題」「1on1ミーティング」など、明日から実践できる具体的なフォロー施策を詳しく紹介します。
せっかくの研修を「やりっぱなし」にしないために、まずは 研修後のフォロー を前提とした仕組みづくりに取り組み、後編でご紹介する具体的な施策をぜひご活用ください。

続きはこちら:「研修をやりっぱなしにしない! 学びを定着させるフォローの科学(後編)」

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では、「ゴールまで支援」 の観点から、研修後のフォローアップ施策まで一貫してサポートします。
受講生が「研修直後は意欲的だったのに、しばらくすると学びが薄れてしまう…」 という課題を抱える企業が少なくありません。
本コラムで紹介した 「エビングハウスの忘却曲線」 によると、学習した内容の 70%は1日以内に忘れられることが分かっています。また、「トランスファー・オブ・トレーニング理論」 では、研修の効果を最大限にするには 「実務との結びつき」「受講者の意欲」「職場のサポート」 が重要だとされています。つまり、研修が職場で活かされるかどうかは、個人の努力ではなく、企業のフォロー体制にかかっているのです。

ヒューマンエナジーでは、こうした理論を踏まえ、 研修後のフォロー まで含めた学びの定着支援を行っています。では、具体的にどのような施策が有効なのでしょうか?
次回の後編では、明日から実践できるフォロー施策を詳しくご紹介します!
続きはこちら:「研修をやりっぱなしにしない! 学びを定着させるフォローの科学(後編)」

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受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

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人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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【コラム】企業 ガバナンス を機能させる唯一の方法——“リアルな危機感”を浸透させる教育とは?

企業 ガバナンス

ガバナンス

「従業員にルールを教えているのに、現場では守られないのはどうしてか?」
この疑問を持つ人材育成担当者は多いはずです。その答えはシンプルです。
「知っている」と「できる」は違うからです。ルールを学ぶだけでは、人は行動を変えません。どれだけ優れた研修でも、受け身のままでは「 ガバナンス を守る文化」は生まれません。
では、どうすれば ガバナンス は「机上の空論」ではなく「現場で機能する仕組み」になるのか?
その鍵を握るのが、人材育成担当者の役割です。
本稿では、
・ ガバナンス が機能しない本当の理由
・効果的なガバナンス研修のポイント
・研修会社との協働で実現できること

この3つの視点から、人材育成担当者が ガバナンス 浸透のために果たせる役割を整理し、研修を通じて現場にどう働きかけるかを考えます。 ガバナンス は、一部の部署や管理職だけで成り立つものではなく、全社的な取り組みが必要なテーマです。そのため、人材育成担当者としては、「何を伝え、どんな研修を実施すれば現場に響くのか?」を考え、研修会社と協力しながら、効果的な仕組みを作ることが重要になります。
私たち研修会社は、そのプロセスを全力でサポートします。
ぜひ、一緒に「実践的な ガバナンス 教育のあり方」を考えていきましょう。


企業 ガバナンス (コーポレート・ ガバナンス )とは、企業が健全に成長し続けるための仕組みです。
透明性のある経営、不正防止、リスク管理、コンプライアンス徹底 —— どれも、企業の持続的な発展には不可欠な要素です。しかし、ルールがあっても、現場で実践されなければ意味がありません。
例えば、大企業で不祥事が発生した際、その原因は「社内ルールがなかった」わけではなく、「ルールがあっても、それが実践されなかった」ことが原因であるケースがほとんどです。では、なぜガバナンスは実践されないのか?従業員にとって「自分ごと」になっていないためです。
「ルールだから守れ」と押し付けても、人は動きません。しかし、「この判断を誤ると、自分のキャリアも会社の未来も危うくなる」と気づけば、行動が変わります。だからこそ、「研修の内容」「研修のやり方」が重要なのです。


単なる知識のインプットではなく、「もし自分の会社だったら?」と本気で考えさせる研修が必要です。

ケーススタディを活用する
失敗事例:「なぜこの企業は不祥事を防げなかったのか?」
・成功事例:「どのような仕組みが機能し、危機を回避できたのか?」

実際の業務と結びつける
・「自分の部署で同じことが起きたら、どうなるか?」を考えさせる
・「このルールが機能しないと、自分のキャリアにどう影響するか?」を具体的に示す

ガバナンスが問われる場面は、突発的に訪れます。そのとき、考えている余裕はありません。だからこそ、事前に「体験」させておくことが重要です。

ロールプレイ研修の導入
・「部下からハラスメントの相談を受けたら、どう対応するか?」をシミュレーション
・「社内で軽微なルール違反を目撃したとき、見過ごすべきか?」という判断トレーニング

知識を得るだけでは意味がありません。「その場で適切な判断ができるか?」を鍛えることが、人材育成担当者のミッションです。

ガバナンス 研修を効果的なものにするためには、「とりあえず研修を実施する」ではなく、「自社にとって本当に必要な研修は何か?」を明確にすることが重要です。
そのためには、次の3つのステップで「必要な研修内容」を特定します。

  • ステップ1:現場の課題を可視化する
    まずは、「自社の ガバナンス に関する課題」を具体的に把握することから始めます。

現場の声を集める
・従業員や管理職に、「 ガバナンス 上の課題」をヒアリングする
・「 ガバナンス 違反が起こる可能性のある場面」を洗い出す

過去の事例を振り返る
・過去に起こった ガバナンス 違反やコンプライアンス違反のケースを分析
・「なぜ違反が起こったのか?」を深掘りし、組織の課題を特定する

組織のリスクポイントをチェックする
・「どの部署で、どんな問題が起こりやすいか?」を整理する。例えば、「営業部では接待のルールが曖昧」「開発部では情報管理の意識が低い」など
このステップでは、「何が問題なのか?」を明確にすることが目的です。

  • ステップ2:研修の目的を定める
    課題を特定したら、「この研修で何を実現したいのか?」を明確にします。例えば、以下のような視点で整理すると、研修の方向性がクリアになります。

従業員にどんな行動をとってほしいのか?
例:「 ガバナンス 違反を見かけたときに、見過ごさずに行動できるようになってほしい」
例:「リーダーが倫理的な意思決定を適切にできるようになってほしい」

具体的にどんなスキルや知識が必要か?
例:「部下がハラスメントの相談をしたときに、適切に対応するスキル」
例:「不正リスクを察知し、未然に防ぐスキル」

研修の効果をどう測定するか?
例:受講者の行動変容をチェックするための評価指標を考える。
(「研修後に、コンプライアンス違反の内部通報件数が増える」など)

このステップでは、「研修がゴールではなく、現場の行動変容がゴールであること」を明確にすることがポイントです。

  • ステップ3:研修の種類と手法を選ぶ
    目的が明確になったら、それを実現するために「どんな研修が最適か?」を選びます。

研修の種類を決める
・新入社員研修 → 「ガバナンスの基礎」を学ぶ
・管理職研修 → 「意思決定とガバナンスの関係」を深掘りする
・現場向け研修 → 「実際の業務で起こりうるケースをシミュレーション」する

効果的な研修手法を選ぶ
・ケーススタディ研修 → 実例を通じて、リスクを実感させる
・ロールプレイ研修 → 現場での対応を疑似体験し、行動できる状態にする
・シナリオ演習 → 「この場面で、あなたならどうする?」を考えさせる

このステップでは、「目的に合った研修手法を選び、受講者が受け身にならないように設計する」ことが重要です。

研修の方向性が見えたら、研修会社と連携しながら、さらに研修内容をブラッシュアップしていきます。研修会社の役割は「研修を提供すること」ではなく、「組織の ガバナンス を強化するためのパートナーになること」です。

研修会社に相談すべきポイント
・自社の課題に合わせてカスタマイズできるか?
・受講者の主体性を引き出すプログラムになっているか?
・研修後のフォローアップ施策があるか?

研修会社は、単なる「知識を伝える場」ではなく、「現場で実践できる研修を一緒に作るパートナー」としてサポートする存在です。
人材育成担当者は、「必要な研修を明確にし、研修会社と協働しながら、組織に根付く研修を設計する」ことが求められます。

ガバナンス 研修を成功させるためには、次の4つのステップ
ステップ1:現場の課題を可視化する
ステップ2:研修の目的を定める
ステップ3:研修の種類と手法を選ぶ
ステップ4:研修会社と協働し、研修をブラッシュアップする

研修は「やること」が目的ではなく、「従業員の行動を変えること」がゴールです。
そのために、適切な研修を設計し、研修会社と連携しながらブラッシュアップしていくことが重要になります。

ガバナンス を強化し、企業の持続的な成長を支えるためには、他社の成功事例と失敗事例の両方から学ぶことが欠かせません。成功した企業は、どのような施策を講じ、組織に ガバナンス を根付かせたのか。逆に、 ガバナンス が機能せず、不祥事や経営の混乱を招いた企業は、どのような課題を抱えていたのか。
ここでは、 ガバナンス 教育に成功した企業の実践例と、 ガバナンス の欠如がもたらした失敗例を紹介します。

(1)横河電機株式会社
横河電機は、指名諮問委員会を設置し、次期社長や役員の選考と育成を目的とした経営者育成・評価プログラムを策定・運用しています。このプログラムでは、求められる資質や人物像を明確にし、複数の候補者を選定、研修や挑戦的な職務経験を通じて育成・評価を行っています。これにより、ガバナンス体制の強化と経営の透明性向上を実現しています。

(2)アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒグループホールディングスは、サステナビリティ戦略を経営の中心に据え、取締役会が経営陣をどのように監督しているかを明確に開示しています。具体的には、取締役会がサステナビリティ戦略をモニタリングするスキルの有無や、報告頻度、報告内容、報酬制度を通じた経営者の評価などを詳細に記載しています。これにより、投資家やステークホルダーに対して透明性の高い情報提供を行い、ガバナンスの実効性を高めています。

(3)武田薬品工業株式会社
武田薬品工業は、サステナビリティに関する考え方及び取組を有価証券報告書に詳細に記載し、非財務情報と財務情報の開示のタイミングを一致させることで、投資家やステークホルダーに対して一貫性のある情報提供を行っています。また、サステナビリティ関連のリスクと機会を識別するためのプロセスを開示し、SASBスタンダードを参照した記載を行うなど、ガバナンス体制の強化に努めています。

(4)清酒製造業におけるガバナンス強化事例
日本政策金融公庫の調査によると、清酒製造業の中小企業では、地域との密接な関係を活かし、地域からの信頼と監視をガバナンスの一環として取り入れています。例えば、地域住民との交流や地元イベントへの参加を通じて、地域社会からのフィードバックを経営に反映させることで、透明性の高い経営を実現しています。これにより、地域からの信頼を得て、持続的な成長を遂げています。

(5)某中小製造業のガバナンス強化事例
ある中小製造業では、経営者が自社のガバナンス体制の脆弱性を認識し、外部の専門家を社外取締役として迎え入れることで、経営の透明性と意思決定の客観性を高めました。さらに、従業員からの意見を積極的に取り入れる仕組みを構築し、内部統制の強化と組織全体の意識改革を推進しました。これにより、取引先や金融機関からの信頼性が向上し、事業の拡大と安定的な成長を実現しました。

【引用・詳細】
経済産業省 「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2024」https://www.meti.go.jp/press/2024/01/20250114003/20250114003.html?utm_source=chatgpt.com
金融庁 記述情報の開示の好事例集
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250203/01.pdf?utm_source=chatgpt.com
同族中小企業のコーポレートガバナンスと事業承継─清酒製造業の事例─
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun2111_04.pdf
コーポレートガバナンスと中小企業―中小企業の生産性向上を促す「攻めのガバナンス」
https://shokosoken.or.jp/shokokinyuu/2017/12/201712_4.pdf?utm_source=chatgpt.com

(1)光学機器メーカーにおける損失隠蔽の事例
巨額の損失を隠蔽するために不適切な会計処理が行われていました。この問題は、内部告発者からの情報提供によって発覚し、経営陣が不正に関与していたことが明らかになりました。
問題点:
・経営陣による意図的な不正:損失を長期間にわたって隠蔽し、財務報告を操作していた。
・内部統制の機能不全:不正を防ぐための監視体制が不十分であり、長期間発覚しなかった。
・内部告発まで問題が表面化しなかった: ガバナンス の仕組みが適切に機能しておらず、従業員が声を上げづらい環境があった。
教訓:
・内部通報制度の整備と適切な運用が不可欠:従業員が安心して問題を報告できる環境を整えることが重要。
・経営陣の倫理観と説明責任の強化:トップマネジメントが率先して透明性を確保し、ガバナンスの重要性を社内に浸透させる。
・監査体制の強化:外部監査の役割を強化し、企業の財務状況を適切に監視する仕組みを作る。
この事例は、企業 ガバナンス の欠如が深刻な問題を引き起こし、企業の信頼を大きく損なうことを示しています。適切な ガバナンス の仕組みを構築し、継続的に見直すことが不可欠です。

(2)電機メーカーにおける不正会計の事例
数百億円に及ぶ利益の水増しが行われていたことが明らかになりました。経営陣は利益目標の達成を最優先し、不適切な会計処理を行っていました。しかし、外部監査や社内の報告体制が十分に機能しておらず、不正が長期間発覚しませんでした。
問題点:
・過度な利益目標の設定:現実的ではない業績目標が設定され、経営陣や現場に強いプレッシャーがかかっていた。
・監査体制の不備:外部監査人や取締役会によるチェック機能が十分に機能せず、不正を早期に発見できなかった。
教訓:
・現実的な目標設定:経営陣は、達成可能な目標を設定し、過度なプレッシャーが組織全体に悪影響を与えないよう配慮する必要がある。
・監査体制の強化:外部監査や内部監査の役割を強化し、企業の財務状況を客観的にチェックできる仕組みを構築することが重要。
この事例は、経営陣の判断が企業全体に大きな影響を与えること、そして透明性のある監査体制が不正の抑止に不可欠であることを示しています。適切な ガバナンス のもとで、健全な経営環境を維持することが求められます。

企業ガバナンスは、単なるルールの遵守ではなく、企業の持続的な成長を支え、組織の信頼を築くための基盤です。しかし、その仕組みを整えるだけでは、実際の業務の中で機能するとは限りません。
本記事を通じて見てきたように、 ガバナンス を組織に根付かせるためには、「学びを行動へと変える仕組み」をつくることが不可欠です。そのために、人材育成担当者は重要な役割を担います。
ガバナンスは、「やらされるもの」ではなく、「企業をより強くするための戦略」です。
その意識を組織全体で共有し、実践できるようにすることが、これからの企業の競争力を高める鍵となります。
人材育成の取り組みが、組織の未来を大きく変えていきます。
適切な教育と仕組みを整えることで、 ガバナンス は企業文化として根付き、より健全で強い組織へと成長していくことでしょう。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では、特に「ワークショップ中心」のアプローチが、企業ガバナンスの教育において重要な役割を果たします。
ガバナンス教育において最も大切なのは、従業員が単にルールを学ぶのではなく、「自ら考え、適切に行動できる力を身につけること」 です。例えば、コンプライアンス研修で「不正行為は禁止」と伝えても、実際に不正の兆候を目にしたときに適切な行動を取れなければ、ガバナンスは機能しません。そのため、研修では「ワークショップ中心」の手法を取り入れ、参加者が主体的に考え、実践的な学びを得られる環境を整えています。具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

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愛知県名古屋市中村区名駅2丁目36番2号 協和ビル604

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お急ぎの方はお電話ください(平日9:00~18:00)

企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

本ブログの著作権は執筆担当者名の表示の有無にかかわらず当社に帰属しております。

【コラム】2024年に ご好評いただいた研修 を振り返る ― ヒューマンエナジーが見据える未来

ご好評いただいた研修

「人材育成は、未来を切り拓く力となる。」
2024年も、当社は多くの研修を実施させていただき、改めてこの言葉を実感しました。AIの急速な進化や働き方改革など、私たちを取り巻く環境は変化のスピードを加速させています。このような時代において、企業の成功を左右するのは「変化に適応し、自ら成長を続けられる人材」の存在です。
ヒューマンエナジーは、こうした未来志向のニーズに応え、「自ら考え、学び、行動する人が活躍できる社会」を目指してきました。私たちが提供する研修は、単なる知識の詰め込みでは終わりません。受講者が現場で実践し、結果を出し続けるための「伴走型サポート」が特長です。

2024年特に高く評価されたのは、以下の3つの研修です。

  1. AI時代のキャリア研修 ~未来を創るためのスキルと考え方~
  2. 管理者の人間力を育むリーダーシップ研修 ~バランス感覚と具体的スキル~
  3. 現場直結型の業務改善研修 ~その場で生まれる具体的な解決策~

これらの研修は、多くの企業で実施され、受講者の成長を通じて組織全体の変革をもたらしました。本稿では、それぞれの成功の秘訣を振り返り、2025年以降の未来に向けた研修の可能性について考えていきます。
「人材育成は、未来を切り拓く力となる。」その一端を、ぜひこのコラムで体感してください。

2024年、多くの企業で高評価をいただいた研修の特徴を以下にご紹介します。


AIの進化に伴い、変化に柔軟に対応し続けるスキルが求められる時代。自分自身の強みを活かしながら、未知の未来に備える研修が注目を集めました。


技術力と人間力のバランスを意識し、若手社員の育成やコミュニケーションの強化を目的としたプログラムが多くの管理者層から支持されました。


現場で直面している課題に即した業務改善アイデアを生み出す形式が、多くの企業で成果を挙げました。

キャリア形成

AI時代のキャリア研修では、受講者が「これからの学び」を自ら考え、行動に移すきっかけを提供しました。事例をご紹介します。

  • 「IKIGAIベン図」(得意なこと、必要とされること、情熱を持てることの交差点を考えるフレームワーク)を活用し、受講者が自分の強みや情熱、社会的な必要性を再確認しました。
  • 個別AIスキルの習熟よりも、将来の社会変化によって個人がどのような働き方・スキルを求められるのかを各自が考えるように設定し、その材料を提供しました。
  • 結果、AIを活用するための「指示プロンプトの習熟」や「課題発見力」など、時代に即したスキルの重要性が議論されました。

この研修は、「未来を切り拓く力」を自ら身につける大切さを伝え、多くの受講者から共感を得ました。

【セミナー動画】AIキャリア研修のご紹介  ~AI時代におけるキャリア像を考える~

技術力だけでなく、部下に寄り添い育てる「人間力」を養うことが重視、さらに若い世代の価値観や働き方を学ぶ機会も提供されました。事例をご紹介します。

部下との効果的なコミュニケーション手法を学び、受講者が現場で実践する際の具体的な指針を提供しました。

無意識の偏見を克服し、公平な職場づくりを支援するプログラムが大きな反響を呼びました。

【コラム】無意識の偏見を克服し、公平な職場を! アンコンシャス・バイアス 研修の効果とは

平均年齢25歳の経営者層が率いる企業の経営会議を題材に、24時間働く熱意を持つ若手メンバーが、ブランドや事業に対して深い愛着を持ち、活発に意見を交わす姿勢が紹介しました。受講者である管理職層は、こうした若い世代の働き方に触れ、自身のマネジメントスタイルを振り返り、「部下の成長を支援できているか」や「挑戦の機会を与えているか」といった問いを深く考える機会となりました。このように、異なる世代の価値観や働き方を理解することは、管理職層にとって新たな視点をもたらす大きな価値となりました。

「40:20:40の法則」に基づき、特に研修後の40%に重点を置いた実践サポート体制を構築しています。6ヶ月間にわたる変革プログラムとして設計され、「働きやすさ」と「働きがい」の両立を重視し、具体的な行動変容を促す仕組みを整備しました。

具体的な取り組み
(1)実践プログラム設計
・月1回の進捗確認や課題解決セッション
・行動目標の設定と振り返り

(2)現場での支援体制
・上司と部下の1on1ミーティング
・チーム会議でのダイアログ手法活用

(3)組織全体での取り組み
・リーダー同士の相互支援体制
・定期的な効果測定と経営層のフィードバック

成果と変化
・コミュニケーションの質向上:オープンな対話文化の醸成や心理的安全性の向上
・リーダーシップの進化:若手への裁量権付与や公正な評価の定着
・組織文化の進化:「パーパス」を軸とした行動の定着と健全な文化の醸成

研修を単発イベントに終わらせず、経営幹部の継続的なコミットメントのもとで企業全体の変革を推進。これにより、持続的な成長を実現しています。

業務改善研修では、受講者が自らの現場で直面する課題を洗い出し、その解決策を考える実践型プログラムが展開されました。事例をご紹介します。

この形式により、受講者は自分たちの業務に対する新たな視点を得ると同時に、課題解決への第一歩を踏み出す機会を得ました。研修内で得られた気づきやアイデアが現場での改善行動につながり、多くの受講者と企業から好評をいただいています。

会社全体の利益構造を改めて理解する研修を実施しました。この研修では、外部講師が財務状況や利益構造を具体的に説明し、「自分たちの仕事が会社全体にどのように貢献しているか」を再確認する場を提供。これにより、社員全体のモチベーション向上につながりました。多くの企業で全社員を一堂に集めることが難しい中、社員総会の1時間を有効活用し、短時間で効率的に重要なメッセージを伝えるというスタイルが特に好評でした。この手法は、忙しい現場を抱える企業にとっても導入しやすく、今後の研修展開においても有効なアプローチと考えられます。

これらの研修が高く評価された背景には、「伴走型教育」を基盤とした以下の3つのポイントがあります。

1.研修から実践への橋渡し
管理者研修では、受講者が研修内容を現場で実践できる仕組みを整備することが重要です。多くの企業で成功している管理者研修では、研修後の支援に重点を置き、学びを業務に反映させるための体制を構築しています。例えば、6ヶ月間にわたる変革プログラムとして設計し、研修後に定期的なフォローアップセッションを実施することで、受講者が学んだスキルや知識を現場の課題に適用できるようサポートしています。また、受講者同士が実践結果を共有する場を設け、課題解決のための対話を深める取り組みも行われています。
さらに、現場での実践を支援する体制として、上司と部下による定期的な1on1ミーティングや、研修で学んだダイアログ手法を用いたチーム会議の運営が有効です。これにより、受講者が実践した行動や成果を振り返り、次の目標を設定するプロセスを継続的に支えます。また、部門を越えたリーダー同士の相互支援体制を構築し、学びを広げる環境を整えることで、研修の成果が組織全体に波及するよう工夫されています。
こうした取り組みを通じて、多くの企業ではオープンな対話文化や心理的安全性の醸成、リーダーシップの進化といった具体的な成果が生まれています。たとえば、若手への裁量権付与や育成型マネジメントの実践、公正な評価の実施が現場で実現されることで、働きやすさと働きがいが両立する職場が生まれています。 研修を単発のイベントではなく、現場や組織全体を巻き込んだ長期的な変革プログラムとして位置づけることで、企業全体での変革を後押しし、持続的な成長を実現することができます。

2.実践と理論の融合
行動経済学やナッジ理論、サーバントリーダーシップに代表されるリーダーシップ理論など、学術的な知見を取り入れつつ、それを現場に適用できる形に落とし込みました。この「実践可能な学び」の提供が、受講者からの評価を高める一因となりました。特にアンコンシャス・バイアス研修では、無意識の偏見に気づき、具体的な行動改善を促す内容が、企業の多様性推進にも貢献しました。

3.受講者に主体性を持たせる設計
研修の構成自体に、受講者が自分の課題に向き合い、具体的な解決策を導き出す仕組みを取り入れました。例えば、業務改善研修では、受講者自身が現場の課題を洗い出し、その解決策を考える場を提供。これにより、受講者の主体的な学びと行動が促進され、企業全体の成果に直結しました。

ヒューマンエナジーは「学びが変革を生む」という信念のもと、2025年は、特に以下の取り組みを推進していきます。

1.行動変容を促す新たなプログラムの開発
行動経済学の応用やAI関連研修等、受講者が職場で新たな視点に基づいて具体的な行動改善を実現できる研修を強化します。

2.テクノロジーを活用した柔軟な学びの提供
AI技術を活用し、個別最適化された学びの場を提供。これにより、物理的制約を超えた柔軟な学びを可能にします。特に研修後フォローアップに活用し、効果を今まで以上に高めます。

3.未来志向の研修テーマの拡充
多様性や心理的安全性、AI時代におけるキャリア形成など、これからの時代に即したテーマを研修に取り入れ、個人と組織の持続的な成長を支援します。

ヒューマンエナジーは、企業や受講者とともに未来を見据え、「成長を楽しむ組織づくり」を目指して進化を続けていきます。

2024年、ヒューマンエナジーが提供した研修は、多くの企業で高評価を得ました。その理由は、研修後のフォローアップ、実践と理論の融合、受講者主体の学びを重視した「伴走型教育」の成果にあります。
特に、AI時代のキャリア研修、管理者の人間力を育むリーダーシップ研修、現場直結型の業務改善研修は、受講者の成長を促し、組織全体の変革を後押しする結果を生み出しました。
2025年も、AIや行動経済学を活用した新しい学びの提供、多様性や心理的安全性をテーマとした研修拡充など、さらに進化を続けます。企業と個人がともに成長し続ける未来を目指し、引き続き価値ある学びを提供していきます。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。当社では、お客様のニーズに応じた柔軟な研修プログラムをご用意しています。企業の個別の課題を丁寧にお伺いし、それぞれに最適な研修やソリューションをご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

株式会社ヒューマンエナジー
愛知県名古屋市中村区名駅2丁目36番2号 協和ビル604

052-541-5650
お急ぎの方はお電話ください(平日9:00~18:00)

企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

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人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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【コラム】無意識の偏見を克服し、公平な職場を! アンコンシャス・バイアス 研修の効果とは

アンコンシャス・バイアス 研修

あなたの職場では、こんなことが起きていませんか?

  • 会議で特定の意見ばかりが通る
  • 採用面接で「なんとなく」印象の良い人を選んでしまう
  • チーム内でのコミュニケーションがぎこちない

これらの背後に、「 アンコンシャス・バイアス (無意識の偏見)」が潜んでいるかもしれません。現代の職場では、多様性が進み、新たなアイデアや価値観がもたらされています。イノベーションの可能性を秘めた環境が整いつつある一方で、私たち自身が無意識に抱く偏見が、意思決定やコミュニケーションの障害となるケースが増えています。
しかし、これは誰もが持つ自然な心の働きです。だからこそ、その存在を認識し、向き合うことが大切です。偏見に気づき、乗り越えることで、多様性を活かした職場づくりが可能になり、信頼関係や生産性が劇的に向上するのです。
本コラムでは、 アンコンシャス・バイアス の正体や職場への影響を紐解きながら、それにどう対処し、組織を次のステージへ進化させるかを解説します。この機会に、無意識の偏見を理解し、職場にプラスの変革をもたらす一歩を踏み出してみませんか?


無意識の偏見( アンコンシャス・バイアス )とは、自分が気づかないうちに特定の人やグループに対して抱いてしまう固定観念や判断のことです。これらは、私たちの迅速な意思決定を支える一方で、不公平や誤解を生む原因にもなります。
例:初対面の相手を見ただけで「この人は話しやすそう」「能力が高そう」といった印象を持つことがありますが、それが実際の能力や性格を正確に反映しているとは限りません。


無意識の偏見は、脳が効率的に情報を処理するためのメカニズムによって生じます。以下はその代表的な仕組みです。

(1)ヒューリスティック(直感的判断)
脳は、迅速に結論を出すために、過去の経験やパターンに頼ります。これにより効率的な判断が可能になりますが、時に誤りを引き起こします。
例:「スーツを着ている人=信頼できる」という判断を無意識に行う。

(2)カテゴリー化
脳は情報を整理しやすくするため、物事をカテゴリー(グループ)に分けます。この分類がステレオタイプや偏見の元になります。
例:「若い人=経験が少ない」といった一般化。

(3)感情と記憶
過去の経験や感情が強い印象を残し、それが次の判断に影響します。特定の属性に対してポジティブまたはネガティブなイメージを持つことがあります。
例:以前に話しやすいリーダーが男性だったため、「リーダーは男性が適任」と考える。


無意識の偏見は、私たちが育った環境や社会的影響によって形成されます。以下のような要因が関わっています

(1)社会的学習
子どもの頃から、家族や学校、メディアを通じて「こうあるべき」という固定観念を吸収します。
例:テレビや映画で「男性はリーダー」「女性はサポート役」といった役割分担が描かれる場面を多く目にする。

(2)文化的影響
文化や地域の価値観が偏見を作り出します。たとえば、性別や年齢に関する固定観念は文化によって異なります。
例:年長者を重んじる文化では、若い人の意見が軽視されがち。

(3)個人的経験
個人の過去の経験が、特定のグループや人に対する偏見を生むことがあります。
例:苦手な同僚が特定の大学出身だった場合、その大学の出身者全体にネガティブな印象を持つ。


無意識の偏見が行動や意思決定に影響を与えると、職場や日常生活で次のような問題が発生します

(1)職場での不公平
採用、昇進、評価において、特定のグループが不利になる。
例:女性や外国籍の候補者が「重要なポジションには向かない」と判断される。

(2)多様性の損失
偏見によって特定の意見や人材が排除されると、多様性が損なわれ、組織の成長に悪影響を与える。

(3)信頼関係の崩壊
偏見が他者とのコミュニケーションや信頼に悪影響を及ぼす。
例:無意識に一部の人の意見を軽視し、職場の人間関係がギクシャクする。

無意識の偏見( アンコンシャス・バイアス )は、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion:DEI)を推進する上で大きな障害となることがあります。たとえば、採用や評価の場面で、無意識に自分と似た価値観や背景を持つ人を好む「類似性バイアス」が働くと、多様な視点や経験を持つ人材が採用されにくくなります。また、昇進や責任のある業務の配分において、性別や年齢に基づく固定観念が影響すると、公平な機会が損なわれる可能性があります。さらに、チーム内のコミュニケーションで特定の属性を持つメンバーの意見が軽視されることで、包摂性が欠如し、心理的安全性が低下することもあります。こうした影響が積み重なると、信頼関係や生産性にも悪影響を及ぼします。

(1)採用プロセスへの影響
履歴書に記載された名前や出身地、第一印象などが無意識に判断を左右することで、応募者が不公平に扱われるリスクがあります。たとえば、名前だけで性別や国籍を推測し、「このポジションには合わない」と決めつけてしまうことがあります。また、「スーツを着ている=信頼できる」といった先入観も、不必要に候補者を過小評価または過大評価する原因となります。

(2)評価・昇進への影響
評価の際、ホーン効果やハロー効果が働き、一部の特徴が他の評価項目に不当に影響を与えることがあります。ホーン効果ではネガティブな特徴(例:服装がだらしない)に引きずられ、その他の能力まで低く評価してしまうことがあり、逆にハロー効果ではポジティブな特徴(例:話が上手い)を過大視し、実績やスキル以上に高く評価してしまうケースがあります。これにより、公平性が損なわれるだけでなく、能力のある人材が不当に機会を奪われることもあります。

(3)チームの協力関係への影響
チーム内で無意識の偏見が働くと、役割の固定化や意見の軽視、心理的安全性の低下が発生します。たとえば、「若手社員はまだ経験が浅いから」と決めつけて重要なプロジェクトに参加させない、「女性メンバーは細かい作業が得意」と思い込んで雑務を押し付けるといった行動が、その人の能力を正当に評価しないだけでなく、チーム全体の連携や士気にも悪影響を与える可能性があります。

人材育成担当者が アンコンシャス・バイアス に向き合うためには、個人レベルだけでなく、職場全体に働きかける仕組みを構築することが重要です。偏見の影響を減らし、多様性と公平性を高める職場環境を作るための具体的な方法をご紹介します。

(1)フィードバック文化を醸成する
偏見に気づくには、第三者の視点が不可欠です。人材育成担当者として、職場でのフィードバック文化を育てましょう。
具体的な取り組み:
・360度フィードバックを導入し、上司、同僚、部下からの意見を収集する仕組みを作る。
・フィードバックの際、偏見に基づく行動に対する気づきを促す質問を含める。
・フィードバックを受けやすい心理的安全性を職場に築くため、研修やワークショップを通じて「正しい伝え方・受け止め方」を指導する。

(2)バイアスを見直す仕組みを導入する
個人の努力だけではなく、組織としての仕組みを見直すことも重要です。
・採用時の仕組み
面接官の評価がバイアスに左右されないよう、評価基準を明文化し、スキルや成果など客観的な指標に基づいた採用を行う。履歴書に名前や年齢、性別を記載しない「ブラインド採用」を試験的に導入する。
・評価プロセスの透明化
昇進や報酬の評価基準を見直し、「偏見が入り込む余地」がないよう基準を明確にする。評価には複数の視点を取り入れ、バイアスを軽減する。

(1)組織全体の意識改革を促す
人材育成担当者として、偏見に対する意識を職場全体で高める取り組みを推進しましょう。
【多様性を可視化】
職場の多様性指標(性別比率、役職における多様性など)を公開し、多様性向上の目標を明確化します。
【全員参加型のワークショップ】
定期的に、職場のメンバー全員が参加できるワークショップを開催します。
テーマ例:「多様性を活かすリーダーシップ」「無意識の偏見が及ぼす影響を考える」。
【ロールモデルの活用】
偏見に向き合い、多様性を活かす行動を実践するリーダーを可視化し、社員が具体的な行動をイメージできるようにします。

(2) 社員が日常的に実践できるツールを提供する
【簡易チェックリスト】
日常の判断や行動を見直すためのチェックリストを全社員に共有し、意思決定の際に活用してもらいます。
例えば、
・この判断は、データや事実に基づいているか?
・相手の性別や年齢、外見に影響されていないか?
・同じ能力の人を公平に評価しているか?
・特定のグループに対して「〇〇は向いていない」と決めつけていないか?
・自分の価値観や好みに合った人ばかりを優遇していないか?
これらのチェックを通じて、バイアスが入り込んでいないかを意識的に確認できます。

【ミニアンケート】
会議やプロジェクト後に「全員の意見が公平に反映されたか?」などを確認する簡単なアンケートを実施し、意識的な振り返りを習慣化します。

(3) バイアス軽減のためのサポートを提供する
【サポート窓口の設置】
偏見に基づく行動や発言について悩みがある社員が気軽に相談できる窓口を設けます。

【メンタリングプログラム】
異なる背景や価値観を持つメンター・メンティーのペアを作り、偏見を乗り越える学びの場を提供します。

業務の中でバイアスへの対策を進めるためには、まず従業員が アンコンシャス・バイアス の存在に気づくことが欠かせません。その第一歩として、研修は非常に効果的です。当社の研修では、基礎知識の習得から、個人・チーム・組織全体での取り組みまで、段階的に学べるプログラムを提供しています。その構成を以下に具体的に紹介します。

(1) アンコンシャス・バイアス とは
研修の第一ステップでは、 アンコンシャス・バイアス の意味や特徴を明らかにし、その利点と欠点を丁寧に解説します。偏見自体が必ずしも悪いものではなく、生存本能や効率的な判断に役立つ側面もある一方で、職場では不公平感を生むリスクがあることを理解することができます。

(2)さまざまな アンコンシャス・バイアス のパターン
次に、多様なバイアスの具体例を挙げ、自分自身がどのような偏見を持っているのかを明らかにしていきます。参加者が「自分も偏見を持っている」という事実に気づくことは、行動を変えるための第一歩です。例えば、「ステレオタイプ」や「確証バイアス」など、日常の中で発生しやすいバイアスを具体的な事例を用いて解説します。

(3) アンコンシャス・バイアス への対処
研修の後半では、偏見を矯正するための具体的な方法論を学びます。このセクションは、実践的であることが特徴です。たとえば、以下のような場面ごとに適切な対処法を身につけます。

  • 部下・後輩に対するバイアス: フィードバックや人事評価で偏見を減らす方法。
  • 上司に対するバイアス: 先入観を排除して適切な信頼関係を築く方法。
  • チームでの取り組み: 多様性を活かす議論や意思決定の仕方を考える。
  • お客様に対するバイアス: 公平な接客や対応を実現するための実践例。

このような構成により、参加者は「自分の偏見に気づき、理解し、行動を変える」プロセスを体系的に学ぶことができます。また、研修の中ではロールプレイやケーススタディも活用し、現場で役立つスキルを習得します。

受講生には、研修内容を職場で積極的に共有することを推奨しています。具体的には、研修後に自身が設定した行動目標をチームメンバーに共有し、チーム全体でその進捗をサポートする仕組みを作ることを目指します。たとえば、「○○バイアスに気を付ける」という目標を立てた場合、実際の会話や行動の中でそのバイアスが表れた際に、メンバーからフィードバックを受けられる環境を構築することが重要です。このような取り組みが上司と部下の間でも実践されれば、信頼関係が深まり、意見を率直に言いやすい風通しの良い組織づくりにつながります。

アンコンシャス・バイアス を実際にどのように意識し、対処するのかを例を挙げて考えてみましょう。たとえば、「高齢者はITが苦手だ」という認識が挙げられます。この先入観は統計的には一理あるかもしれません。新しいツールを説明しても「難しい」と感じる方が一定数いることは事実です。しかし、このような認識を個々人に当てはめるのは問題です。具体的には、新しく入社したAさんが68歳だった場合、「AさんはITが苦手だろう」と決めつけるのではなく、「Aさん、ITに関してどのようなご経験がありますか?」と具体的に確認する姿勢が求められます。このアプローチにより、個々人の能力や特性を正しく理解することが可能になります。
アンコンシャス・バイアス は誰にでも存在するものですが、自分の偏見に気づき、正しいコミュニケーションを取ることで、組織全体がより公正で協力的な環境へと進化していきます。

現代の職場で重視される多様性の推進には、無意識の偏見( アンコンシャス・バイアス )への対応が不可欠です。無意識の偏見とは、気づかないうちに特定の人やグループに対して固定観念を持つことで、採用や評価、コミュニケーションにおいて不公平を生じさせる原因となります。偏見は脳の効率的な情報処理の副産物として形成され、社会的学習や文化的影響、個人的経験により強化されます。この偏見が職場に及ぼす影響は大きく、多様性、公平性、包摂性(DEI)の実現を妨げる要因となるほか、信頼関係や生産性の低下を引き起こします。まず一人ひとりの「これもそうなの?」という気づきが偏見の改善への第一歩です。日々の意思決定や行動の中にどのようなバイアスが潜んでいるかに気づき、それを見直し、排除していくことが、多様性を活かした組織づくりへの土台となります。無意識の偏見を認識し向き合うことで、偏見を軽減し、多様性を活かした創造的で公正な職場環境を築くことが可能です。具体的には、バイアスを軽減する仕組みの導入や全従業員向けの研修、意識改革の推進が有効です。これにより、個々の能力を最大限発揮できる環境が整い、組織全体の成長や持続的な発展が期待されます。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では特に「社会の変化への対応」に関連しています。現代の社会は、多様性、公平性、包摂性(DEI)がますます重視される方向に進んでおり、企業や組織にもその変化への適応が求められています。無意識の偏見( アンコンシャス・バイアス )は、特に多様化が進む職場環境において、意思決定やコミュニケーションに影響を及ぼす重要な要因です。この偏見に気づき、向き合うことで、従業員の多様な背景や価値観を尊重する姿勢が育まれ、柔軟で創造的な組織文化を築くことが可能になります。当社の「 アンコンシャス・バイアス 研修」は、多くの企業様からご好評をいただいており、最近ではご依頼が増加しています。特に、職場の多様性を活かす具体的な取り組みとして研修を導入した企業では、コミュニケーションの質が向上し、業務効率の改善にもつながるとのお声をいただいています。さらに、 アンコンシャス・バイアス 研修は、偏見を減らすだけにとどまらず、個人やチームがより良い意思決定を行い、社会の多様性や公平性に対応する能力を高める貴重なきっかけとなります。このような取り組みは、企業が様々な社会の変化に対応するための基盤を強化するものといえるでしょう。当社では、お客様のニーズに応じた柔軟な研修プログラムをご用意しています。企業の個別の課題を丁寧にお伺いし、それぞれに最適な研修やソリューションをご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

株式会社ヒューマンエナジー
愛知県名古屋市中村区名駅2丁目36番2号 協和ビル604

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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

本ブログの著作権は執筆担当者名の表示の有無にかかわらず当社に帰属しております。

【コラム】変化の時代を生き抜く!従業員の キャリア形成 の支援

キャリア形成 の支援

キャリア形成

人材育成担当者にとって、従業員一人ひとりの キャリア形成 をどう支えるかは重要なテーマです。しかし、「どこから手をつけるべきか」「どのような支援が効果的なのか」を迷われている方も多いのではないでしょうか。
たとえば、こんな悩みをお持ちではありませんか?

  • 従業員がキャリアについて主体的に考えていないように見える
  • キャリア形成支援をしているが、成果や効果が見えづらい
  • 従業員一人ひとりの多様なニーズにどう対応すれば良いか分からない

私たちは、 キャリア形成 を「仕事を通じて従業員の人生を豊かにするプロセス」として捉えています。 キャリア形成 の支援は、従業員個々の成長を促進するだけでなく、組織全体の活力向上にもつながるものです。本コラムでは、 キャリア形成 の基本的な考え方から具体的な支援方法まで、人材育成担当者が現場で活用できる視点をご紹介します。

キャリア形成 とは、一人ひとりが自分の職業人生を主体的に設計し、目標に向かって継続的にスキルや経験を積み上げていくプロセスを指します。 キャリア形成 というと、社内での出世ルートや昇進の説明と捉えられることもありますが、それだけではありません。 キャリア形成 とは、従業員の価値観やライフスタイルを反映した“生き方全体”を形作ることなのです。

プロティアンキャリアとの関係性
キャリア形成 を考えるうえで鍵となるのが『プロティアンキャリア』という概念です。経済学者ダグラス・ホールによって提唱された概念で、個人が自分の価値観や目標に基づき、柔軟にキャリアを形成していくことを重視します。「プロティアン(Protean)」とは、ギリシャ神話に登場する神プロテウスに由来し、状況に応じて変幻自在に形を変える性質を意味します。この考え方は、変化の激しい現代社会において、柔軟性を持ちつつ自分らしいキャリアを築くための重要な指針となります。

プロティアンキャリアの視点から見ると、 キャリア形成 には次の3つの要素が欠かせません。
主体性:従業員自身がキャリアの主導権を持ち、自分の未来をデザインする力を引き出す。
柔軟性:変化の激しい社会に対応できる力を育む。
価値観の重視:変化の激しい社会に対応できる力を育む。

キャリア形成 を主体的に進めることは、仕事だけでなく、家庭や地域社会など多様な場面における自己実現を支える基盤にもなります。そのため、個人の意識や行動だけでなく、企業が支援の仕組みを整えることも重要です。

現代社会において キャリア形成 がこれまで以上に注目される背景には、以下のような変化があります。

従来の「終身雇用」や「年功序列」に基づく働き方が減少し、転職やジョブ型雇用が一般化する中で、個人が自らキャリアを築く必要性が増しています。企業が用意したキャリアパスに従うのではなく、働き手自身が目標を設定し、学び続けることが求められています。

平均寿命の延びにより、働く期間がこれまでよりも長くなっています。キャリアの途中で再教育や方向転換を行うことが一般的になり、複数の職業を経験する「マルチキャリア」の時代へと移行しています。これにより、キャリア形成が「若い時期だけの課題」ではなく、生涯を通じて取り組むべきテーマとなっています。

テクノロジーの進化やグローバル化が進む中、従来の職業や働き方が消滅・変容し、新たなスキルや適応力が必要になっています。また、リモートワークや副業の普及により、「多様な働き方」に対応するキャリア設計が重要となっています。

「お金を稼ぐためだけの仕事」から「自分らしい生き方の実現手段」としてのキャリアへの意識が高まっています。働く人々は、自己実現やワークライフバランス、社会貢献といった価値観に基づいたキャリアを追求するようになっています。

キャリア形成 の目的は、従業員が自分らしい生き方を実現するために、以下を支援することです。

キャリア形成 は、自分自身の価値観や目標に基づき「なりたい自分」に近づくための手段です。仕事を通じて自己の強みを活かし、成長を実感することで、人生全体の充実度を高めることができます。

変化の激しい社会で長く活躍するためには、時代に合わせてスキルや知識をアップデートし続けることが必要です。 キャリア形成 は、こうした「環境変化に適応する力」を培うプロセスでもあります。

キャリア形成 を通じてスキルや経験を積むことは、自身の市場価値を高め、安定した収入や働く場所を得ることに繋がります。また、自分に合った働き方を追求することで、仕事からのストレスを軽減し、心身の健康を保つ助けとなります。

個々の キャリア形成 が進むことで、多様な人材が育成され、企業や地域社会、さらには社会全体の競争力や持続可能性を高めることができます。個人の成長と社会の発展は相互に影響し合う関係にあります。

キャリア形成 はもはや全ての働く人々にとって重要なテーマです。個人が自己実現を追求する中で、社会や企業との相互関係を築き、より良い未来を創造することが、 キャリア形成 の究極の目的と言えるのではないでしょうか。

現代の企業は、従業員一人ひとりの キャリア形成 を支援することが重要な課題となっています。従業員が成長を実感し、仕事へのモチベーションを高めることで、企業全体の成果向上にも繋がります。企業が従業員のキャリア形成を支援する際に意識すべきポイントをお伝えします。

企業が キャリア形成 を支援する第一歩は、従業員が自身の価値観や強み、キャリア目標を明確にできる場を提供することです。それをサポートすることが キャリア形成 の基盤となります。自分の方向性を把握することが成長と成果に繋がります。
具体的な取り組み例
・ワークショップ形式で目標や価値観を整理する機会を提供する
・自己診断ツールを活用して自己理解を促す
・キャリアコンサルティングや定期的なキャリア面談を実施する

従業員が将来の成長イメージを描けるよう、職務や昇進の道筋を明確にすることが重要です。選択肢があることで、従業員は自分に合ったキャリアを主体的に考えるきっかけを得られます。ただし、選択肢は固定化せず、柔軟性を持たせることが重要です。
具体的な取り組み例
・昇進、異動、専門職への道など、複数のキャリアパスを設ける
・ロールモデルとなる従業員や上司のキャリア事例を共有し、参考にできるようにする

従業員がスキルアップを図れる環境を整えることは、 キャリア形成 を支援する上で非常に重要です。従業員が成長を実感できる環境は、モチベーションの維持に欠かせない要素となります。また、スキルアップや新たな業務への挑戦を支援することで、長期的な人材育成が可能になります。
具体的な取り組み例
・社内外の研修やセミナーを充実させる。
・業務を通じたOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を積極的に設計する
・ジョブローテーションや社内公募制度を導入する

キャリア形成 は一度の支援で完結するものではなく、継続的なフォローが欠かせません。従業員の成長や変化に応じて支援内容を見直し、柔軟に対応することが求められます。その上で、適切なサポートを提供することが重要です。結果として、従業員が組織の中で「成長している」と実感でき、モチベーションの向上や離職率の低下につながることが期待されます。
具体的な取り組み例
・上司との定期的な1on1ミーティングを実施する
・フィードバックを基にキャリアプランの見直しを促す
・人材育成担当者はキャリア支援プログラムの効果を定期的に測定し、必要に応じて改善する

従業員が主体的に キャリア形成 を進められるよう支援することは、企業にとって重要な取り組みとなっています。このような背景の中、『グッドキャリア企業アワード』は、厚生労働省が主催する表彰制度として、模範的なキャリア支援を行う企業を選定し、広く社会にその事例を発信しています。以下では、受賞企業の中から成功事例をいくつかご紹介し、その取り組み内容について解説します。

1.住友生命保険相互会社
「人財共育」の理念のもと、多彩な制度や専任チームによる理念浸透・取組推進活動等により、入社から定年まで切れ目なく全社的にキャリア支援・開発を推進
・経営戦略をもとに「人財共育(共に学び育つ」に取り組むことを社長自らが発信し、理念浸透、取組推進専任チーム「エバンジェリストチーム」が全国の全所属長と課題を抽出・共有し、アクションのすり合わせ等を実施。
・本人希望や自己研鑽の状況を尊重した職務付与や異動配置を行う「マイキャリア運営」のもと、様々なキャリア支援メニュー(キャリア支援面談、1on1、興味ある分野 の業務体験等)を選択、活用できる機会を提供。

2. キヤノンマーケティングジャパン株式会社
退職時ヒアリングや年代別セミナーを通じた課題解決により、離職防止と信頼関係構築を推進し、評価への納得感向上を実現。
・若手の早期離職者増加を受け、従業員の退職時のヒアリングを実施し、分析・把握した課題をもとに、キャリア面談・年代別セミナー等のキャリア支援施策に反映させ、従業員のリテンションに貢献。
・目標管理面接とは別に部下と上司のキャリア面談の機会を設けることで信頼関係の構築を図り、ひいては人事評価に対しても高い納得度を得ている。キャリア支援施策について労働組合等との情報交換等を通じて品質向上に努めている。

これらの事例から、キャリア支援プログラムの成功には、従業員個々の状況に応じた柔軟な支援と、継続的な学びの場の提供が鍵となることがわかります。詳細は厚生労働省の公式サイトhttps://www.mhlw.go.jp/career-awardで確認できます。

キャリア形成 は、個人が自らの価値観や目標に基づき、成長を目指す主体的なプロセスです。その意義は、単なる仕事の成功に留まらず、人生全体の充実感や自己実現に繋がる点にあります。変化の激しい現代社会において、企業が従業員の キャリア形成 を支援する役割はますます重要です。従業員の自己理解を深めるワークショップやキャリア面談、学び直し(リスキリング)を支援する環境整備などは、成長を支える有効な施策です。こうした取り組みは、従業員の成長を促すだけでなく、企業全体の持続的な発展にも寄与します。また、私たちのミッション「自ら考え、学び、行動する人が活躍できる社会をつくる」は、プロティアンキャリアの概念と深く重なります。プロティアンキャリアが強調する主体性や柔軟性は、私たちが目指す「自ら考え、学び、行動できる人が活躍する社会」の実現そのものです。これからの企業は、従業員が自己の可能性を引き出せる環境を提供し、共に成長する存在であるべきだと考えます。私たちは、プロティアンキャリアの概念を実践し、企業と従業員が共に輝く社会づくりを目指しています。


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ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では特に「学びと成長の機会を提供する」ことに力を入れており、従業員一人ひとりが自分の価値観や強み、キャリア目標を明確にするためのキャリアデザイン研修が好評です。これにより、従業員の主体性を促し、個々の キャリア形成 を支援します。具体的な研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

株式会社ヒューマンエナジー
愛知県名古屋市中村区名駅2丁目36番2号 協和ビル604

052-541-5650
お急ぎの方はお電話ください(平日9:00~18:00)

企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

株式会社ヒューマンエナジー
人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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【お知らせ】2024/12/1 名古屋本社 移転のご案内

名古屋本社 移転のご案内

お取引先様各位

拝啓 時下ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、このたび株式会社ヒューマンエナジーは、2024年12月1日(日)より、下記の住所に移転することとなりました。
お手数をおかけしますが、新しい住所へのご変更をお願いいたします。なお、電話番号の変更はございません。

これを機に従業員一同さらに専心努力いたし ご期待にお応えする決意でございます。今後とも皆様のご支援ご指導を賜りますよう伏してお願い申し上げます。

敬具

2024年11月吉日

株式会社ヒューマンエナジー
代表取締役 神山晃男

【移転日】 2024年12月1日(日) 
【新住所】  〒451-0045 名古屋市西区名駅一丁目1番17号 名駅ダイヤメイテツビル11階
【電話番号】 052-541-5650(電話番号は変更ございません) 

以上

【コラム】新人社員の成長を加速!実務に直結する フォローアップ研修 とは|ビジネスを成功に導く人材育成

新入社員 フォローアップ研修

4月に新しい環境でスタートを切った新入社員も、半年が経過する頃には業務や職場に慣れ、自分の役割を理解しながら日々の業務に取り組んでいることでしょう。しかし、この時期になると、新たな課題が浮上し始めます。たとえば、職場や業務の現実とのギャップに気づいたり、社内メンバーとのコミュニケーションの取り方に悩むことが多くなるほか、モチベーションの低下や自己成長への焦りを感じやすくなります。その一方で、入社時の研修で培ったスキルが徐々に発揮され始める時期でもあります。 こうした状況に対処し、次のステップへ進むためには、適切なサポートが必要です。 フォローアップ研修 を通じて、これまでの経験を振り返り、業務遂行力やコミュニケーション力、自己管理力をさらに向上させることで、成長を加速させ、モチベーションを再燃させるきっかけを提供します。
今回は、 フォローアップ研修 の概要とその効果についてご紹介します。まず、 フォローアップ研修 の目的や、新入社員が抱える課題とニーズに触れ、研修を通じてどのようにサポートできるかを解説します。さらに、具体的な研修内容をご紹介し、実施に適した時期についても説明します。

半年程度の実務経験を経て、日常業務の中で感じる課題や悩みを共有し、それらの解決策を検討する場を設けることで、業務の効率化や改善に繋げます。また、個々の課題に対するフィードバックを受けることで、自分自身の改善点を理解し、今後の成長に活かす機会を提供します。

職場の人間関係や業務の進め方が見えてきた段階で、さらに効果的なコミュニケーション手法や、チームでの協力を深める方法を学ぶ機会を提供します。特に、部門間の連携や、チーム内での役割分担を効果的に行うための手法を学ぶことが重要です。

入社当初の高いモチベーションが徐々に低下することを防ぐため、今後のキャリアビジョンを明確にし、自身の成長を感じられる機会を提供します。新たな目標設定や、今後のキャリアステップに対する自信を持たせることで、モチベーションの再燃を促します。

フォローアップ研修 は、同時期に入社した社員同士が再び集まり、これまでの経験や学びを共有する場でもあります。これにより、同期のつながりを再確認し、今後の業務における相互サポートが期待できます。

新入社員がこの時期に感じる不安や悩みを早期に解決することで、離職防止につながります。 フォローアップ研修 は、会社が社員の成長を重視しているというメッセージを伝える機会でもあり、社員のエンゲージメントを高める意義があります。

新入社員は入社後半年の間で、職場のルールや日々の業務に少しずつ慣れてきます。最初の数か月は、基礎的なスキルの習得やチーム内での役割認識が中心でしたが、半年を迎える頃には、自分なりの仕事の進め方が定着しつつあります。この期間は、最初の目標を達成し、成長を感じやすい時期でもあります。

(1)職場適応の課題
半年経って職場に慣れたように見えても、まだ本当の意味での適応には至っていない新入社員も多くいます。例えば、上司や同僚との関係構築が思うようにいかず、コミュニケーションの取り方に悩むことがあります。また、企業文化やチーム内での暗黙のルールを理解するのに時間がかかる場合もあります。この「見えない壁」は、新入社員が自分自身を職場に完全にフィットさせるための大きな課題となります。

(2)業務理解のギャップ
業務の基本的な流れを理解しても、全体の仕組みやプロジェクトの大きな枠組みを把握することには時間がかかることがあります。特に、ビジネスの目的や成果にどう貢献するかといった大局的な視点を持つことは、入社半年の段階ではまだ十分にできていないケースが多いです。このギャップを埋めるためには、より深い業務理解を促す支援が必要です。

(1)モチベーションの変化
入社当初の高いモチベーションは、半年経つ頃には徐々に低下してくることがあります。最初の達成感や新鮮さが薄れてくる中で、次なる目標を見つけられない場合、業務に対する意欲が減退してしまうことも少なくありません。この時期には、新しいチャレンジやキャリアビジョンを明確にする機会を提供することが、モチベーションを再燃させるために重要です。

(2)ストレスの増加
半年という期間は、仕事のペースが加速し始め、成果が求められる時期でもあります。新人としての猶予期間が終わり、より大きな期待を感じるようになると、プレッシャーやストレスも増加します。また、自己成長に対する焦りや、人間関係に関する不安もストレスの要因となります。これに対処しないと、メンタルヘルスに影響が出る可能性もあります。

フォローアップ研修 は、新入社員がこれまでに学んできた知識やスキルを再確認し、日々の業務に定着させるための重要な機会です。入社後の実務を通じて得た経験を踏まえながら、研修で習得した内容を再度確認することで、知識がより深く定着し、スキルの実践力も高まります。また、研修を受けた当時には理解しきれなかった部分も、この時期に改めて学び直すことで、より実務に直結した形で身に付きます。

入社から半年経過した時点では、最初のモチベーションが低下している社員も少なくありません。 フォローアップ研修 では、これまでの成長を振り返るとともに、新たな目標を設定し、モチベーションを再確認することができます。自身の成果や成長を見直し、今後のキャリアビジョンを明確にすることで、仕事に対する意欲が高まり、持続的な成長を促進します。特に、このタイミングでの研修は、新たな刺激を提供し、業務に対する再チャレンジの機会を与えることができます。

実務経験が積まれた段階での フォローアップ研修 は、業務の改善や効率化にもつながります。新入社員は、入社後の現場で感じた業務の課題や効率化のポイントを研修で共有し、解決策を見出すことが可能です。また、他の新入社員との情報共有やフィードバックを通じて、自身の業務の進め方を見直し、改善する機会が得られます。このようにして、研修で得た学びを活かすことで、より効果的な業務プロセスを構築し、生産性向上に貢献することができます。

フォローアップ研修 では、現場での課題をシミュレーションし、解決策を実践的に学ぶためにロールプレイやケーススタディを取り入れます。これにより、現実の業務で直面する問題に対処するスキルを強化し、自信を持って業務に取り組めるようになります。例えば、クライアントとの対応や上司への報告・連絡・相談の場面をロールプレイで練習し、フィードバックを受けることで、具体的なスキルの向上が図れます。

業務における「コスト」「納期」「品質」「協働」といった要素を意識しながら、チームで成果物を作成するシミュレーション型のワークを実施します。このワークでは、限られた時間内に各チームが役割分担をし、効率的に業務を進める能力が試されます。目的は、制約条件の中でいかに最大の成果を出すかを学ぶことです。
過去の研修では、参加者はスピード感を持って取り組んだものの、品質意識が不足し、時間管理やリソース(仕入れ)の最適化に課題が見られました。このワークでは、限られた条件下で「スピード」と「品質」を両立し、効率的なリソース管理を意識しながらパフォーマンスを最大化する力を身につけることが求められます。チームとして協力し、複数の要素をバランスよく意識することで、実務に活かせる学びが得られるのがこのワークの特徴です。

職場でのストレスに対処するための具体的な方法と、モチベーションを維持し続けるための実践的なスキルを学びます。たとえば、自己管理のポイントや、日々の業務にポジティブな視点を取り入れる方法など、明日から実践できる内容を習得することで、ストレスを緩和し、持続的な成長につながる習慣を身につけられるようにします。

入社後半年という時期に フォローアップ研修 を行うのには、いくつかの理由がありますが、必ずしもこの時期に限定されるものではありません。遅れて実施しても効果を得ることは可能ですが、以下の理由から半年後が効果的とされています。

(1)業務への適応が完了する時期
入社してから半年も経つと、新入社員は基本的な業務や職場環境に慣れ、日々の業務を自立して進められるようになります。このタイミングは、基礎的なスキルが安定してきた頃なので、より高度なスキルを学ぶ準備が整います。研修によって、応用力や課題解決力を向上させることができます。

(2)成長の停滞を防ぐため
初めの数か月は学ぶことが多く、成長のスピードも速いですが、半年ほど経つと業務がルーチン化し、学びのペースが落ちる時期です。フォローアップ研修は、この「成長の停滞期」に再び成長を加速させ、次のステップに進むための刺激を与える役割を果たします。

(3)モチベーション低下の防止
半年を過ぎると、新入社員は仕事に慣れる一方で、当初のモチベーションが下がることも多いです。また、自分の成長や成果が見えにくくなることから、自己評価が低くなりがちです。この時期に研修を行うことで、再び目標を明確にし、モチベーションの再燃を図ることができます。

(4)職場や同僚との関係性が安定する時期
半年程度で、同僚や上司との関係が形成され、チームの中での役割が少しずつ明確になります。このタイミングで、コミュニケーション力やチームワークをさらに向上させる研修を行うと、より一層のパフォーマンス向上が期待できます。

半年を過ぎてから フォローアップ研修 を実施しても、もちろん効果を得ることは可能です。実際には、次のようなタイミングでも有効です。

(1)1年目の総括として
1年目の終わりに総括的な研修を行い、1年間で得た経験を振り返り、さらなる目標設定を行う機会にするのも有効です。この場合、入社後の1年間を総合的に見直し、長期的なキャリア形成の基礎を築くことができます。

(2)部署異動や新しいプロジェクト開始のタイミング
業務内容や役割に大きな変化があった際、 フォローアップ研修 を行うことで、変化に対応するためのスキルや心構えを学び、適応力を高めることができます。

遅れて実施する場合、以下の点に留意する必要があります。
・成長の停滞が長引く可能性
適切なタイミングで支援がないと、社員が自発的に成長する機会が減少し、モチベーションの低下やスキルの停滞が長期化するリスクがあります。
・離職率の上昇
モチベーションの低下や不安を抱えたまま放置すると、離職につながることがあります。特に半年から1年の間は離職率が高くなる傾向があるため、早めのフォローが効果的です。


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【コラム】 新入社員が組織に対応するための準備 は出来ていますか?|ビジネスを成功に導く人材育成

新入社員が持続的に成長し、組織に適応するためには、研修後も継続的なサポートが不可欠です。入社直後だけでなく、半年や1年といった節目でのフォローアップを行うことで、個々の成長を支え、業務における課題解決やスキルの強化を促進できます。定期的なサポートは、モチベーションの維持にもつながり、職場でのパフォーマンス向上に寄与します。 フォローアップ研修 は、新入社員が直面する課題を再確認し、改善策を学ぶ絶好の機会です。知識やスキルの定着を図るとともに、業務の進め方やチームでの協力を学ぶことで、職場への適応をスムーズに進めることができます。こうした研修を通じて、新入社員の職場定着率が向上し、組織全体の生産性も高まるでしょう。

ヒューマンエナジーの「カスタマイズ研修」では、お客様が抱えている課題をお聞きし、目的や組織や人物像を理解して解決案を提示し、個別に研修を組み立てます。カスタマイズ研修には4つの特徴があります。「ビジョン反映型」「社会の変化に対応」「ワークショップ中心」「ゴールまで支援」の4つです。今回の内容では特に研修はワークショップ中心で進めます。現場での課題をシミュレーションしながら、ロールプレイやケーススタディを多く取り入れています。これにより、現実の業務で直面する問題に対処するスキルを実践的に学び、自信を持って業務に取り組むことができるようになります。 また、研修では、受講者が入社後の半年間を客観的に振り返る機会を提供します。さらに、研修後、現場に戻ってからも「再び頑張ろう!」というモチベーションを維持できるような支援を行います。 研修内容や実施タイミングはお客様のニーズに応じて柔軟に対応いたします。企業の個別の課題をお聞きし、最適な研修やソリューションをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

お客さまの目指す組織・求める人材像を把握した上で、経営ビジョンに沿った研修を実施します。

お客さまのお悩みを伺いながら、VUCA時代に激化する市場競争に対応できる人材と組織を開発します。

受講生同士のコミュニケーションを大切にしながら、互いの考えや気づきを共有することで相互理解を促します。

研修後も伴走し、目指す組織・求める人材像に向き合い続けます。


今回ご紹介した研修の振り返り・評価のサポートや、お客様の課題やご要望に応じて年単位・半年単位での組織変革・人材改革も支援いたします。
企業研修のことならヒューマンエナジーにお気軽にお問い合わせください。

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企業研修 研修講師 ヒューマンエナジー堀里恵

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人材育成トレーナー、キャリアコンサルタント
堀 里恵(ほり りえ)


【資格】国家資格キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター基礎研修修了

1,000人以上の学生指導経験。就職活動対策講座を通して自信を持って活躍できるキャリアパスを醸成します。エンゲージメント向上研修では目指す組織・求める人材像をヒアリング。お客様と共にプランを作成します。

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